フォレストサイドハウスの住人達(その14)
27 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(482)
鶴岡次郎
2016/07/18 (月) 16:25
No.2880

「ゴメンナサイ・・・、
調子に乗って変なことを口走って…・」

「判っている・・、
私の事情を知っても、こうして平然と付き合ってくれている・・
由美子さんが商売女を軽蔑していないのは良く判っている・・・」

「軽蔑なんて…、私のやっていることを考えれば、
そんな気持ちはとても持てない…」

由美子の言葉に千春が黙って頷いています。

「あの時、演技で声を出すのは簡単にできることでないと言いたかったの・・、
ある事情があって、意識して声を出す練習を続けたことがあった・・、
うまくできるまで相当練習した経験があるものだから・・・、
普通の女が思い付きで演技をしようと思っても無理で、
それが出来るのは、その道のプロだけだと思っただけなの…・、
決してプロに偏見を持っているわけではない・・」

「判っています・・。・・。
由美子さんが私たちに偏見を持っていないのはよく判っている・・。

ところで・・、プロの一人だけど・・・
私・・・、お店ではほとんど声を上げないのよ・・、
何故かしらね・・
まだまだ、素人だということかしら…・、フフ……」

「・・・・・・」

返す言葉を見つけられなくて、困った表情で由美子は千春を見つめています。どうしても先の失言が
気になっている由美子で、千春の軽口に乗れないです。

「ほら、ほら・・、そんなに気にすることではないよ・・、
感じれば大声を上げ、そうでない時はおとなしい・・・、
やはり・・、私はただのスケベー女なのだということです・・。
まだまだ修行が足りません…、到底由美子さんにはかないません…・」

「あら・・私だって…、
演技で声を上げるのは、よほど理由がある時だけだよ…・」

「参考までに教えてほしいのだけど…、
どんな時に演技をするの…」

愛が突然話に割り込んでいます。

「エッ・・、それを聞くの…!
いいでしょう・・、
ここだけの話にしておいていくださいね・・・」

笑いながら由美子が話しています。

「70過ぎの相手とする時とか・・、
20前後の若い男が相手の時・・・、

気ばかり走って、肝心のモノが役に立たない時、
少しばかり演技をすることにしている…・
男性に気が付かれない程度に演技することが大切です・・・」

「勉強になります…」

千春と愛が神妙に頭を下げ、その後、三人の女はその場で大笑いしています。


「やっぱり由美子さんは、違う…・
私など・・、自分のことしか考えない…」

「それでいいのよ・・、
自然に出る声が、一番男性のハートに響くと思う…」

千春と由美子、この話題になると話は尽きないようです。

「お話し中ですが・・・、
あの時、大声を出す、出さない話は、それくらいにして・・・、
話を本筋に戻しましょう…、
本当にお二人はおスケベーね…・、フフ…・・」

愛が割り込んでいます。千春と由美子が大笑いで応えています。

「はい、はい、判りました、千春さんさえ良ければ、
あの時に声を出す話題は止めます・・・」

「あら私のせいですか・・・、
確か・・、由美子さんが言い始めたと記憶していますが…・」

「ハイ、ハイ・・・、スケベーな私が悪いのです…。
あの時大声を出している千春さんを覗き見した私が悪いのです・・」

「もう・・・、やはり私が一番スケベーだと言いたいのね・・・、
判りました、この場はそれで治めておきましょう…
いずれ判ると思います・・。
ほんとにスケベーなのは誰か…、
案外愛さんだったりして…、フフ……」

にぎやかに三人が笑っています。