フォレストサイドハウスの住人達(その14)
21 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(476)
鶴岡次郎
2016/06/22 (水) 15:35
No.2872

愛がお茶を入れながら由美子と千春に声をかけました。

「ネ・・・、
先ほどからお二人の華やかなお話を聞いていて・・、
私・・、体が熱くなるほど興奮した時もあったけれど・・、
それ以上に、ずいぶんと教えられることが多かった・・、
お二人の自由な振る舞いに一歩でも近づきたいと思った…。

そして・・、変な話だけど…、
ある疑問と言うか・・、女にとって永遠のテーマを・・・、
今更のように抱くことになった…」

愛が何を言い出すのかと・・、由美子と千春が笑みを浮かべて愛を見つめています。

「私たち女にとって・・・、
セックスとはどんな意味を持っているのだろう…、
セックスは私たちの人生、日々の生活の中で・・・、
どんな役割を果たしているのだろう・・、
そんなことを・・、柄にもなく考えることになった・・・」

由美子も、そして千春も虚を突かれたような表情をしています。

「そうね・・、確かに…・、
セックスがしたい・・、
セックスをしてすっきりした・・、

あの人に抱かれたい、
あの人には抱かれたくなかった・・、
そんな感情を抱くことはあっても、

このセックスにどんな意味があるのか・・、
このセックスの目的は何か・・・、
そんなことを真剣に考えたことはないわね…・・」

これまでセックスの目的と効果について、真剣に考えたことがなかったことを由美子があっさり認め
ています。

「セックスの目的と効果について真剣に向き合う時と言えば・・、
セックスと妊娠の関係ね・・・・・、

確かに・・、子作りを前提に主人とセックスしたことはあるし、
主人以外の男とセックスをした結果として、
妊娠の不安を抱いたことは数え切れないほどあるでしょう・・・、

私たち女性にとってセックスと妊娠は、切っても切れない関係と言うより、
物事の表と裏の関係だと言えるでしょう…。
だから、セックスする時は、いつもの妊娠のことが頭から消えない…。

でも、これは愛さんの言うセックスの目的とその効果を真剣に考えることとは、
多少違うように思える。女性の本能そのものだと思える…。

愛さんのように、しらふで、冷静にセックする目的を考えたことはない・・・。
さすが元看護師長・・・、発想が並みの女性と違うね・・」

由美子が本音で感心しています。

「おっしゃる通りです。私なんか・・、セックス、イコール、本能のうごめきとしか考えていません
でした。結果として、子供を授かりましたけれど・・、
セックスの目的とか、その結果と真剣に向き合ったことはありません・・・」

千春が由美子の説明に頷いています。

「以前、勤務していた医院で私はたくさんの女たちの姿を見てきた。婦人科に来る患者の大半は、
当然のことだけれど、セックスにかかわる診療で来るのよ…。

来院する患者の大半はみんなから祝福され、望まれて妊娠した幸せな女達だけれど、中には、一生懸
命セックスをしても子供を授からない夫婦・・、不幸な事件や事故にかかわって、無知ゆえに、ある
いは、暴力で無理やりセックスをして、望まない妊娠をした女達、不注意なセックスで厄病を背負い
込んだ女達、そんな問題を抱えた女たちも数えきれないほど見てきた。

女であるが故に・・、セックスをするが故に・・、
不幸な運命を背負ざるを得なかった女たちをたくさん見てきた。

もし・・、女たちがセックス行為と縁を切れば・・、
セックスのできない体になれば・・、
彼女たちの人生も大きく変わるだろうな、と思うことが何度もあった・・」

「・・・・・・」

思いがけない・・、しかし、説得力ある愛の説明に、由美子も千春もじっと耳を傾けています。女と
生まれてセックス行為と無縁で生きることは、不可能だと判っていても、セックス行為と縁を切れば
女の人生は大きく変わるという愛の説にはかなり説得力があるのです。この場は、反論や質問をしな
いで、とにかく愛の説明を最後まで黙って聞くつもりに、二人の女はなっているようです。