フォレストサイドハウスの住人達(その14)
2 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(457)
鶴岡次郎
2016/05/11 (水) 15:01
No.2853

由美子と佐王子

千春の切なる希望を聞き届けて由美子は千春の情人である佐王子とかかわりあった経緯を説明するこ
とになりました。二人の男と女、並みの人たちではありません、すさまじいとしか言いようのない、
男の力と、女の力に恵まれた佐王子と由美子の話です。

「毎年のことだけれど、Uさんがまとめる天狗組の総会が開かれるのよ・・、
佐王子さんと出会ったのはその総会だった…」

由美子がゆっくり説明を始めました。

「Uさんと言うのはね・・・、
由美子さんの情夫さんで、アレのでかい人よ…
由美子さん・・、彼にメロメロなの…・
彼との色事の話が出ると、夜が更けるまで続くことになるから・・・
聞いているだけで、私なんか興奮して、濡れ濡れになる…・」

「愛さん・・・、余計な解説はいりませんから…」

愛が口を挟み、由美子が睨んでいます。

「私と佐王子さんとの関係を理解していただくには、的屋の全国組織である天狗組のことにある程度
触れる必要があります、組織の活動内容や組員の生活習慣を聞けば千春さんはきっと驚き、軽蔑する
と思います。だけど、天狗組が今日まで続いているのは、組員たちが頑固に守っている特殊な生活習
慣のおかげだと私は思っているのです。

一般の人が眉をひそめるような生活習慣を頑固に守ることにより、組員の間に鉄の結束力が育まれた
のだと私は思っている。今では他の組織では天狗組のような生活習慣は消え、的屋もサラリーマン化
したと言われているけれど、私は個人的には、いつまでも天狗組の生活習慣が続いてほしいと思って
いる。千春さんにこの生活習慣を無理に理解してほしいと思わないけれど、聞きづらいところはさら
りと聞き流してください…・・」

千春がこっくりと頷いています。


数年前、露天商の大組織である天狗組の全国組長総会が九州の有名温泉地で開かれた時のことです。
全国から32名の組長が組長夫人ないしは愛人を連れてこの温泉地に集まることになるのです。当
然、総組長であるU(宇田川裕、由美子の情夫)は総会の招集者として参加しなければいけないので
す。ところが、総会の一週間ほど前、悪性のインフルエンザに罹り入院しました。高熱でうなされ
て、強靭な体を持ったUもさすがに弱音を吐くほどで、数日後に迫った総会への出席が危ぶまれて
いました。

総長の発病を知って、総会を延期することが総会開催事務局を担当する九州支部から打診がありまし
た。長い間準備を重ねてきた関係者の苦労を考えて、Uが決行の判断を下しました。天狗組に目下の
ところ重要な懸案事項もなく、万が一、Uが不在でも問題ないと判断したのです。

総会二日前になって、ようやく病状は回復に向かいました。それでも、長旅は無理だととのことで、
ドクターストップが入りました。やむを得ず由美子一人で総会に出席することになりました。総組長
名代として由美子が出席することになったのです。