フォレストサイドハウスの住人達(その14)
13 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(468)
鶴岡次郎
2016/05/31 (火) 10:56
No.2864

先ほどから由美子の様子を愛がじっと観察しています。ここまで、あれほど頑固に佐王子の凄さを認
めなかった由美子がここへきてあっさり自身の非を認めて千春に謝っているのです。興奮のあまり少
し猥雑になってきた千春との会話を早く収束させたいとの単純な思いの他に、由美子自身にもこの話
題をこれ以上は避けたい思惑が愛には感じ取れたのです。できることなら佐王子と過去に関係を
持っていた事実さえも抹殺したいと由美子は思っている様子なのです。

由美子をよく理解している愛は彼女の言葉の裏に隠された本音を何となく察知できた様子です。そこ
で愛がゆっくりと口を開きました。

「由美子さんの告白を聞いていて・・・、
千春さんが不愉快になるのではと心配したのよ・・・、
だって・・、過去のこととはいえ、千春さんの男を寝取った話でしょう…、
せっかく親しくなった二人が喧嘩別れすることになったら大変と思っていた・・。

それが・・、
彼と寝た事実より、由美子さんが彼とのセックスでそれほど感じなかったことを・・、
千春さんが責め立てたでしょう…、

予想外の展開だった…・。
でも・・、良く考えると千春さんらしい反応だったとも言える・・」

「そう言っていただけると、とってもうれしい・・・。
私自身も良く判らない感情なんです・・、
由美子さんのこと、嫉妬しないかと聞かれれば、
今でも嫉妬していると答えます・・、
でも・・、佐王子さんに抱かれてそれほど感じない由美子さんが・・、
許せない気持ちの方がもっと強かったのだとおもいます・・・・」

「自分がおいしいと思って大切にしているモノを・・、
由美子さんにもおいしいと言ってほしかったのね・・・」

「ハイ・・、その通りです・・。
なんだか子供っぽいですね…・。
由美子さんには押しつけがましいことを言いました。
スミマセンでした…」

「いえ・・、私こそ・・・、
佐王子さんを大切に思う千春さんの気持ちをもっと理解するべきでした…」

愛のとりなしで由美子も千春も笑みを浮かべています。二人の間にわだかまりは何も残っていない様
子です。

「その後・・、彼とは連絡を取っていないのですか・・
何かがあっても怒りませんから・・、正直に言ってください…、ふふ…」

「それがね・・・、残念だけれど・・、フフ・…、
佐王子さんとの接触は後にも先にもこれっきり…、
町で出会えば、もちろん気が付くけれど・・、
今日・・、千春さんと会わなければ、決して、思い出さなかった男性・・・。
これが私と佐王子さんの全て・・・」

「なあ…だ・・・、それだけですか・・・、
身構えていたのに・・、損しちゃった…・・」

これで由美子の長い話は終わりました。愛が新しいお茶を準備するため席を立ちました。千春もお手
洗いに行きました。一人その場に残された由美子がじっと宙を見つめて少し厳しい表情をしていま
す。そして、ポツリと言葉を漏らしました。

「ゴメンナサイね・・、千春さん…・
感じなかったというのは嘘・…」

千春はお手洗いからまだ戻ってきません。愛はキッチンでお茶の準備です。由美子は視線を宙に遊ば
せて、何かを思い出している様子です。

「今でもはっきり覚えている・・、
いえ・・、この体が覚えている…。
あの味、あの感触…、一生忘れない…・
ああ・・・、もう一度…、彼に・・・、会いたい…・・」

お尻を持ち上げて布団の上に行儀よく正座した脚を崩しています。かかとで陰部を刺激し始めまし
た。ゆっくりと腰を揺らしています。

「佐王子さんは最高の男・・、間違いない…・。
思い出すだけで濡れだしてくる、そんな男の一人よ…。
でも・・、本当のことを言っても・・・、
誰のメリットにもならないし…、これでいいのよ…、
忘れることにする…、それしか道がない…・・」

最後の言葉を大きなため息と一緒に吐き出しました。戸の閉まる音がして用を済ませた千春が戻って
くる様子です。崩していた姿勢を正し、微笑みを浮かべて由美子は立ち上がりました。千春と入れ替
えに手洗いに行くつもりです。