フォレストサイドハウスの住人達(その14)
12 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(467)
鶴岡次郎
2016/05/30 (月) 13:13
No.2863

ここで千春の口がようやく止まりました。佐王子の凄さを説明する言葉はあらかた出し尽くした様子
です。ほっとした由美子がこの話題の締めくくりにかかるつもりのようです。この機会を逸するとま
た佐王子賛歌を千春が歌いだす可能性が高いのです。体を乗り出すようにして千春に語りかけました。

「私・・、千春さんに謝らなければいけないと思っています・・・・」

「エッ・・、謝る…
謝る必要は何もないですよ・・・、
由美子さんと彼が寝たのは、私と付き合う前だし・・・、
少しは妬けるけれど、由美子さんが謝ることは何もない・・」

「ううん・・・、
そういう意味ではないの…、
私の感性が乏しくて、彼を十分評価できなかったことをあなたに謝りたいの…」

「カンセイ・・・・?」

由美子の意図が良く理解できない様子で千春が由美子を見つめています。愛もいぶかしげな表情で由
美子を見ています。二人に見つめられながら由美子がゆっくり話し始めました。それまで千春ペース
で展開していたその場の雰囲気を由美子がリードする形勢になっています。

「佐王子さんは間違いなく最高の男だと思います・・・、
その最高の男に抱かれながら、それほど感じなかったのは・・・、
佐王子さんに対しては勿論・・・、
彼を慕う千春さんへも、失礼なことだと思っています・・。

また、一方では、それほどの男に接しながら、それほど感じなかったのは、
一人の女として残念な気持ちもあります・・。

いずれにしても、千春さんには不愉快の思いをさせました。
この通りです・・・。
私と佐王子さんの話はできることなら、すべて忘れてください・・。

最強の男、佐王子さんを十分評価できなかったのは・・、
私にとっては不名誉な話ですし、
千春さんにとっても不愉快の話だと思いますから・・・」

由美子が深々と千春に頭を下げています。この話題から早く逃げ出したい思惑がありありと見えま
す。

「良く判りました…、いずれにしても・・、
由美子さんが感じていないのなら、それはそれで仕方ないことです…・
私には最高の男でも、由美子さんには普通の男だったのですから…。
良く判りました・・・。いろいろ失礼なことを言ってスミマセン・・・・」

「ありがとう・・、
判っていただいて、正直・・、ほっとした…」

由美子が笑みを浮かべてまた頭を下げています。