フォレストサイドハウス(その13)
9 フォレストサイドハウス(その13)(424)
鶴岡次郎
2016/02/27 (土) 16:31
No.2815
千春が語り始めました。おしゃべりですから、非常にうまく説明しています。由美子も愛も千春の物
語に完全に引き込まれています。

高校を卒業してシューフイッターの道に入り、センスの良さと美貌の助けも借りて入店三年ほどで、
千春は銀座の有名店内でトップを走るフィッターになったのです。

売り上げが伸びれば出来高に応じて給料の上乗せがありますから、店員たちはあの手この手の売り上
げ作戦を展開しました。きれいな女性フィッターが居て、お金のある中年男たちが集まると自然の流
れで、隠微な雰囲気になります。客に恥ずかしい姿をチラ見させ、これと思うお客には触らせ、高価
な靴を買い取らせるサービスがこの高級店でも密かに行われていたのです。全員ではありませんが千
春も含めた複数の女たちの間でお色気作戦が密かに常態化していたのです。

そんな時、ある男がふらりと千春の店に訪ねてきました。高級で、粋な服装ですが、どこか崩れた感
じのする中年男でした。数人いる女店員を注意深く観察していたその男は千春を見つけると、すぐに
千春に接近してきました。最初の日は千春に顔を売るのが目的だったようで、高価な靴を買い求めて
直ぐに帰りました。それからかなりの頻度で顔を出すようになりました。

その男は直ぐに千春担当のお客と店内で認められるようになり、いつも千春がその男の対応をしまし
た。肉体的な関係ができたのはその男が店に現れてから一ヶ月後でした。関係ができると男は店に顔
を出さなくなり、店が終わった後ホテルで会うようになったのです。

後でわかったことですが、彼はY市でソープを経営するベテラン竿師だったのです。そして裏では、
金回りのいい顧客に密かに素人女をあっせんする、いわゆる高級コールガール斡旋稼業を副業として
いたのです。自分の顧客からこの店のお色気サービスを聞き、いい女が居ればスカウトするつもりで
訪ねてきたのです。そして彼の目に留まったのが千春だったのです。

店内では男のものを咥えるまではサービスしていましたが、店内で絡み合うことはしませんでした。
男は店外での付き合いを求めたのです。千春はこの要求を適当に聞き流していたのです。その気に
なったその日、千春の欲望が高まっていて、体が朝からうずき始めていたのです。そして、ぼつぼつ
男の要求を受けた方が今後のためにもいいと思ったのです。ところが、どこと言って特徴のない、ど
ちらかと言えば貧相に見える50男の手で千春は完全に翻弄されたのです。

挿入するまでに全身を舌と指で愛撫され、数え切れないほど千春は昇天しました。最後には喉が涸れ
て、思うように声が出せない状態になっていました。ホテルの部屋に入って40分後に挿入されまし
た。それほど巨大なものではなく、並みサイズでしたが、それは縦横に動き回り、千春のポイントを
確実に突き崩していったのです。何度か悲鳴を上げて逝った後、最後には全身をけいれんさせて気絶
してしまったのです。

初めて知った本物の男の味に、千春は夢中になりました。数回男に抱かれると、連絡が少しでも絶え
ると、千春から催促して男に抱かれる日を決めるようになりました。こうなると男の思うままです。
かねての計画通り男はことを進めました。

「千春は万に一人の才能を持った女だ。
一人の男に尽くして生涯を終える普通の女ではない・・。
そのことは千春が一番よく分かっているはずだ…」

ベッドの上で、そしてホテルに向かう道すがら、その男は千春の素晴らしさを歌うように教え込むよ
うになりました。

「千春は自分の情欲を恥じているが、それは間違っている・・。
誇りに思うべきで、もっと自分に自信を持ってほしい・・。
男欲しさから安易な気持ちになって、
あの靴店で女を安売りするのはなんとも惜しい…。
千春の価値はそんなものではない…」

体の疼きに堪えかねてお客に体を差し出している千春の苦悩を知り尽くしている男にとって、千春を
説き伏せることはそんなに難しくなかったのです。

「男が欲しいのなら・・、俺に任せてほしい・・・、
千春にふさわしい男をタイミングよく供給してあげる。
金が稼げて、安全に男を手に入れることができるのだ・・。

一歩踏み出すだけでいいのだ…、
そうすれば、こみ上げる欲望をいつでも満足させることが出来るのだ…、
そして、千春の秘密は俺が命を懸けて守り切る…」

普通の人が聞けば首を傾けたくなる都合のいい話ですが、体の中を突き上げる情欲に悩まされ、ほ
てった体をいつも持て余している千春にとって、優しく囁かれる彼の言葉は説得力があったのです。

靴を売るためお客に抱かれるのと、お金をもらって客の相手をするのは、そんなに違わないと千春は
考えたのです。人目を恐れて店内で破廉恥行為をするより、決まったところで男に抱かれる方が
ずっと安全だとも思ったのです。男の説得に千春は頷きました。

千春が了承したその夜、早速千春はお客をとりました。バタバタと決まった感じで、気が付いたらホ
テルのベッドで中年男に抱かれていたのです。体を売ったのは初めて経験でしたが、何の感傷も千春
の中には沸いていませんでした。それから週に二、三度お客をとるようになりました。