フォレストサイドハウス(その13)
42 フォレストサイドハウス(その13)(457)
鶴岡次郎
2016/05/05 (木) 17:45
No.2848

その場が少しシリアスな雰囲気に変わっています。燃え盛る情炎をその内に抱え、毎日のように、数
知れない男たちの腕の中で悶え狂いながら、家庭に入ればいい妻を演じている由美子、そんな女の存
在を認めなかった千春がようやく由美子の実像に触れたのです。

由美子のような生き方をしたい・・。千春は心からそう思っているのです。一方、体と心のギャップ
と戦いながら、必死で生きる道を探し続けている千春の苦悩を由美子は誰よりも良く理解していまし
た。そして、由美子の苦悩とこれまでの血の滲むような努力を一番理解してくれるのが、知り合った
ばかりの千春であることを、由美子は本能的に感知していました。

傑出した女の性を持つ女二人がしっかりと手を握り、黙って見つめ合い、永遠の友情を誓い合ってい
るのです。

「同じ女性と関係を持った男性達を『穴兄弟』と呼ぶでしょう・・、
同じ男性と関係を持った女性は何と呼べばいいのかしら…」

ニコニコほほえみながら愛が千春と由美子の表情を見ながら質問しています。少し湿っぽくなった
その場の雰囲気を変えようと、ことさら陽気に振舞おうとして選んだ話題なのです。

「肉棒姉妹・・・、なんだか即物的ね・・・、
おチンコ姉妹・・・、これでは品がないし・・」

千春が愛の意図を受けて、きわどい言葉を連発しています。

「マラ姉妹と言うのが一般的だけれど…、
私は竿姉妹がいいと思う…」

由美子もその場の雰囲気を盛り上げようとしています。

「さすが由美子さん・・・、
それがいい…、きれいな言葉…」

愛が大きな声を上げています。

「私と由美子さんは竿姉妹なのね・・・、
由美子さんが長女で私が何番目かの妹…、
それにしても、何人の姉妹がいるのかしらね・・・、
100人・・、いや・・、1000人は軽く超えるかも…」

千春が思いを込めて言っています。由美子も軽く頷いています。どうやら二人の間には大きなわだか
まりは存在しない様子です。そのことを確認して愛が安どの表情を浮かべています。そんな愛の安堵
を吹き飛ばすような言葉を千春が吐き出しました。

「由美子さん・・、良かったら…・、
佐王子さんとの馴れ初め・・、
聞かせていただけませんか・・」

「エッ・・・、千春さん、本気なの…。
佐王子さんと由美子さんの関係を聞きたいなんて…、
今更、掘り起こさなくても…、
惚れている男と昔なじんだ女の話など不愉快になるだけだよ…
せっかくこうして親しくなれたのに、喧嘩別れは嫌だよ…」

当然の忠告を愛がしています。

「いえ、良いんです…、
おっしゃるとおり、佐王子さんは私にとって特別な人です…。
その特別な男が、由美子さんを尊敬して、強い関心を持っているです。
だから、私は・・・、お二人のことを詳しく知りたいのです・・」

「・・・・・・・・」

千春から聞いた今までの経緯を考えると、佐王子が由美子に敬意に近い特別の関心を持っているの
は明らかです。男と女の間で、敬意が強い愛情に代わるのは簡単です。それだけに愛も、由美子も、
千春の本心を測りかねて、複雑な表情を浮かべています。