フォレストサイドハウス(その13)
27 フォレストサイドハウス(その13)(442)
鶴岡次郎
2016/03/28 (月) 10:47
No.2833

「まさに・・・、
愛さんが今抱いている疑問・・、
その疑問を夫も抱いたそうです・・・」

愛のつぶやきにも似た言葉を聞いて、千春がわが意を得たように、顔を輝かせています。

「夫に接する佐王子さんの真摯な態度を見ていて、彼は決して嫌がらせや、その場の思い付きで、
重大な秘密を明かしたのではないと確信したのです。そして、重大な秘密をあえて、婚約者である
夫に明かすには、それなりの深い意味があると考えたのです。

そこまでたどり着くと・・・、
佐王子さんの考えていることが自然と見えて来たそうです・・」

「そう・・、旦那様には見えたのね…。
申し訳ないけれど、私には何も見えてこない・…」

愛が困った表情で千春に言っています。

「参りました…、
男たちの高尚なやり取りは、到底私には理解不能です・・。
お願いだから、佐王子さんの考えていることを教えてください・・」

愛がついにギブアップしています。

「二人の男たちは千春さんに心から惚れているのよ、
私から見ても異常なほど彼らは千春さんに惹かれている・・・。
彼らの行為は千春さんの吸引力が重要な要素になっているから、
千春さんの口からは言い難いこともあると思う・・。

ここから先は、私の意見を言っていいかしら…。
間違っているようだったら修正してください…・」

それまで静かに話を聞いていた由美子が笑いながら口を開きました。千春が微笑み、頷いています。

「佐王子さんは千春さんを心から愛していて・・・、
千春さんの体のことを隅から隅まで知っていると自負している…。

愛人にしたのも、売春をさせたのも、何も知らない他人から見ると千春さんを食い物にしているよう
に見えるけど、これらはすべて、千春さんを愛するが故に、千春さんのためを思って、佐王子さんが
あえてしたことだと思う。

誤解を恐れないで言えば・・・、
愛人稼業も、売春稼業も、千春さんの天職だと彼は考えた上で・・・、
その仕事を千春さんに与えたのだと思う・・。
多分・・、千春さんもこのことをよく理解していて、
進んで佐王子さんの誘いに乗ったのだと思う…」

由美子の説明に千春が小さく頷き、愛が不審そうな表情を浮かべています。

「変則的な愛情と言えば、否定できないけれど、千春さんと出会って以来、
佐王子さん千春さんをずっと守り続けてきた・・。

結婚後は・・、当然のことながら・・・、
その役割を浦上さんが引き継ぐことになる・・・。
そのためには、千春さんの体に関し、
浦上さんが佐王子さん並みの知識を持つべきだ・・・と、
佐王子さんは考えたのだと思う…」

千春が何度も頷いています。どうやら由美子の推量は的を射ているようです。愛もおぼろげながら
由美子の説明が判ってきた様子です。

「ああ・・・、そうか・・・、
浦上さんにとって、耳に入れたくない、本当に辛い秘密でも・・・、
この先、千春さんを守るためには・・・、
千春さんの全てを知る必要があると佐王子さんは考えたのね・・。
妬みや、嫌がらせとは発想が根本的に異なるのね・・・、
すごいね・・・、男の愛情は・・・・・」

由美子の説明を何とか理解できた愛が興奮して感想を述べています。その言葉に由美子が軽く頷き、
千春が涙ぐみながら何度も頷いています。

「おぼろげに佐王子さんや、夫の大きな愛を感じ取っていましたが・・・、
由美子さんの解説を聞いて、改めて彼らに感謝する気持ちでいっぱいです・・」

男たちの愛情を本能的に感じ取ってはいたのですが、由美子の説明を聞いて、千春は改めて二人の
男の大きな愛情を言葉で理解して、涙を流しているのです。