フォレストサイドハウス(その13)
26 フォレストサイドハウス(その13)(441)
鶴岡次郎
2016/03/24 (木) 14:56
No.2832

「どうして・・・、また…、
そんなことをすれば、すべてが終わってしまう…。
あっ・・・・」

そういってしまった後、目の前の千春を見て、愛が次の言葉を飲んでいます。

「終わりではなかったんだ・・・
浦上さんは・・、千春さんとの結婚をあきらめなかったんだ…。
ああ・・・、ゴメンナサイね・・、こんな言い方をして・・・」

慌てて、不注意なことを言ってしまった愛が謝っています。

「いえ・・、いいんです・・・、
愛さんがそう思うのは当然です…。
生涯、夫には売春のことは隠し通すつもりでした・・・・。
この秘密が漏れれば・・・、
婚約破棄になると覚悟していましたから・・・」

「浦上さんの底知れない度量には感服するけれど・・、
佐王子さんのやり方は間違っていると思う・・。
そんな話を聞けば、男は逃げ出すものね…、
佐王子さんは何を考え、何が狙いだったのかしら・・・」

千春の秘密を全て浦上に話した佐王子のやり方を愛は責めているのです。

「もしかして…、
千春さんを手放したくなくて…、
浦上さんをあきらめさせるため・・・、
愛人稼業も、娼婦稼業も、洗いざらい、すべて話したのかな・・」

「私もそう思いました…。
結婚後しばらくしてから、この話を夫から聞いたのですが・・・、
佐王子さんが嫌がらせで言ったのだと、その時、思いました…」

「誰でもそう思うよ・・
それ以外の理由など他に考えられない…」

愛が怒りを込めて相槌を打っています。

「でも・・・、
夫の受け取り方は違っていました・・」

「エッ・・、
旦那様は違う受け止め方をしていたの…」

「ハイ・・・、
嫌がらせかなと一瞬疑ったそうですが・・、
直ぐに、そんな汚い手を打つ佐王子さんではないと思い直したそうです。
もし、私を手放したくないと思うなら、佐王子さんは真正面から勝負をする人だと言っていました。
佐王子さんは二人の婚約を本当に喜んでいたそうです…」

「彼を信用しているんだ・・
旦那様は…・」

あきれた表情を浮かべ愛が呟いています。それまで黙って二人の話を聞いていた由美子が何事か感じ
るところがあるようで、何度か頷いています。

「それにしても、判らない・・・!
嫌がらせでなく、心から二人の婚約を祝福しているのでしょう・・、
その佐王子さんが、なぜ、愛人稼業と娼婦稼業の秘密を婚約者に明かすの…、
そのメリット・・・、目的は・・、いったい何なの…・?」

不機嫌そうに愛が言っています。