フォレストサイドハウス(その13)
24 フォレストサイドハウス(その13)(439)
鶴岡次郎
2016/03/22 (火) 11:57
No.2830

「半年ほどお付き合いして、結婚しました。
そして・・・、結婚を機に退社しました・・」

「エッ・・、寿退社したの…?」

シューフイッターの仕事に情熱を傾けていた千春があっさり寿退社を決めたことに愛が驚いていま
す。若い二人ですから、子供ができるまでは共稼ぎできたはずなのです。.

「お店勤めを続けながら静かな結婚生活を続ける自信がなかったのです。
私のことですから・・・、きっとお客様に手を出すと思ったのです。
佐王子さんとの愛人関係も消滅し、
もちろん、コールガールの仕事も辞めました…」

「愛人稼業も、コールガールもその時点では、自然消滅したんだね・・
過去を清算し、きれいな状態で結婚したんだ…
その意味では寿退社を決めたことは評価できるけれど…・」

愛が複雑な表情を隠そうとしないでコメントしています。口には出しませんがその後再び佐王子との
愛人関係が復活し、さらにソープに勤めることになる千春の運命を愛は知っているのです。

「その気はあったのです。
狙い通り・・、結婚ですべてが円満にリセットされました・・。
この平穏な期間が続けば普通の生活に戻れたと思うのですが・・・」

「・・・・・・・」

悲しそうな表情を浮かべ語る千春を愛が慈愛を込めた表情で見ています。

「それでも、頑張って…、
結婚後・・、5年間は夫一人の生活を守り切ることが出来ました…」

「そう・・・・、よく頑張ったね…」

「毎日のように、複数の男に抱かれていたわけですから・・・、
正直言って・・・、
夫一人を守り切るのはつらい時期もありました・・・。
それでも、長男が生まれると、
子育ての中で体の疼きを忘れることができるようになり、
三年間ほどは夢中で子育てに専念できました・・・・」

「そうね…、
子育て中は簡単に男を断つことができるとよく言われるね…、
女ってそういう体のつくりになっているのかもしれない…」

同じ経験をした由美子が同感の言葉を出し、子供のいない愛までが大きく頷いています。

「この先もわたしの体が落ち着いてくれれば、問題はなかったのですが・・・、
長男が幼稚園に入るころから、私の中にいる悪い虫がうごめき始めました。
以前にも増して、体が燃え始め、どうにも我慢できない状態になりました・・・」

「情が濃いというのも大変なことなんだね・・・」

愛が呟くように言い、由美子が難しい表情で頷いています。二人には千春の苦悩が良く理解出来るの
です。

「旦那様がいち早く私の異常に気が付きました・・・。
彼・・、佐王子さんと相談し、
昔のように、佐王子さんが私を定期的に抱いてくれることになったのです・・・・」

「そう…、佐王子さんとの愛人関係が復活したのだね…。
それしか方法がないよね…」

愛が頷いています。

「それにしても旦那様の対応は素早いね・・
千春さんの異常に気が付いて、直ぐに佐王子さんを宛がったのでしょう…、
普通の男はそうはいかない…。
妻に別の男をあてがう決心をするまで、相当時間が必要になるはずだけれど・・」

どうやら由美子自身の身に起きたことを振り返っているようで、由美子が疑問を口にしています。
由美子の場合は別の男が宛がわれるまで、夫婦の間でいろいろな葛藤があったのです。

「そうね・・、由美子さんの言うとおりよ・・・、
妻に愛人をあてがうと決心するのは、男にとって大変なことだから…。
そうだ・・・、もしかして・・、
佐王子さんが旦那様より早く千春さんの異常に気が付いたのでは…」

突然の思いつきを愛が話しています。