フォレストサイドハウス(その13)
11 フォレストサイドハウス(その13)(426)
鶴岡次郎
2016/03/02 (水) 17:08
No.2817

「いろいろありました・・、それでも、コールガールを続けたことで、大きな破綻なく表の仕事で
あるシューフィッターを続けることが出来たのです。店でのお色気サービスを止めましたので、仲
間から後ろ指をさされることもなくなり、本当の意味での友達もできました。何かに怯えて勤めて
いた頃に比べて、思いっきり仕事に打ち込めるようになりました。あの時点でコールガールの道を
選んだ私の選択は間違っていなかったと今でも確信しています。

考えてみてください、望めば毎日でも違う男が手に入り、十分なお金までいただき、面倒なトラブ
ルが起きそうになると例の男が出てきてうまく治めてくれるのです。避妊の方法や、病気の心配
だって、あの男が特別の医院を手配してくれて、懇切な指導と手当てを受けることが出来るように
なりました。

私のような女にはこれ以上の環境は望めません。彼には本当に感謝しております。私を救ってくれ
たソープの経営者、佐王子さんに感謝しています・・」

「エッ…、佐王子・…、
そのソープの経営者で、竿師の男って…
千春さんをコールガールに仕立て上げた男は…、
名前を佐王子さんと言うの…」

「ハイ・・・、そうです・・・、
佐王子保さんと言います・・」

由美子の質問に千春が不審そうな表情を浮かべています。

「由美子さん・・、ご存知の方ですか・・・・?」

「ううん・・・、
ただ珍しい名前だから、つい聞いてみただけ・・
・・・で、彼・・、幾つくらいの人なの…」

「はっきりわかりませんけれど…、
50歳は超えていると思います…」

「そう・・、50歳ね・・・、
私の知っている人とは別の人だと思う…・、
失礼しました・・、
話の腰を折ったわね・・、続けて・・・・」

由美子の質問に少し不審そうな表情を浮かべましたが、すぐ思い直したようで、笑みを浮かべている
千春です。それでも小さなわだかまりが・・、小さな疑惑が・・、千春の中に沸き上がっていたので
す。

〈由美子さんは佐王子さんを知っている・・・、
もしかすると、二人の間には深い関係があるかも…〉

しかし、それで不愉快になるほど深い感情ではありませんでした。直ぐに由美子の質問のことは忘れ
ていました。

「う・・ん・・・、
お話を聞いて、千春さんの言い分はよく判った…、
それでも・・、
千春さんが高級コールガールの道を選んだことは・・・、
やはり・・・、賛同できない・・・・。
もう少し、建設的な道がなかったのかと言いたい・・・・。

でも・・、矛盾しているようだけれど…、
一方では、今の千春さんの説明を聞いて、
千春さんが体を売る道を最終的に選んだのだことは非難できないどころか、
体の奥で千春さんの行為に賛同している自分が居る・・。

我慢に我慢を重ね・・、
狂いだすほど男恋しくなる日々が続き・・、
この先も永遠にこんな苦しい日々が続くのかと思い知らされた時、
『絶対に安全だから・・』
『誰にもバレないから…』
『望むままに男が選べるよ…』・・・と、
ベテランの仕事人から甘い言葉で誘われれば・・、
女なら・・、千春さんと同じ道へ踏み出すかもしれないと思っている・・・」

愛が難しい顔をして、自分に言い聞かせるように意見を述べています。由美子も同意見なので
しょう、頷いています。