フォレストサイドハウスの住人達(その12)
51 フォレストサイドハウスの住人達(その12)(414)
鶴岡次郎
2016/02/01 (月) 11:46
No.2802

「花を添えるとは・・、さすが三郎さん・・、
うまいこと言うわね…、

そう・・、あの方は私の指輪を見て人妻だと判っていたはず、
そして相手の男が夫でないと最初から気が付いていた・・・、

私のいけない行為を見て、軽蔑するわけでもなく、
勿論、嫌がらせをすることもなく、じっと見つめていてくれたのよ・・・」

「ほう・・・、浮気だと最初から知っていたのか…」

「そうなの・・・、女の浮気には女はことさら厳しいからね、
軽蔑されて当然なのよ、それがあの方は優しく見つめてくれた・・」、

「確かに浮気のつけは、男の場合より、
女性がその罪を犯した場合の方が世間の風当たりが強いね・・・、
女性たち自身でさえ、男の罪より、女の罪を強く追及する傾向があるね・・」

「『女だって、やりたい時は、自由にやるべきだよ・・・』と・・、
あの方は私をやさしく諭してくれた・・・」

「その方は・・、
日頃から女性の置かれた不公平な立場に不満を持っているのかもしれないね・・・、
そうは言っても、千春は自由に楽しんでいるけれどね…」

「三郎さんのおかげです…、感謝しています・・」

「いや、いや・・・、知っての通り・・、
僕の場合は高遠な思想があって、千春を自由に泳がせている訳でない、
僕一人では千春を満足させられないから、千春を愛しているから、
この道を選んでいるわけだ・・・。
何時も、焦げ付く思いで千春の浮気話を聞いている・・」

「スミマセン…」

「いや、いや、千春が謝ることではない…、
僕が好きでやっていることだから・・、
最近、やっと、千春の浮気話を心から楽しめるように成った・・」

「本当にそうだと嬉しいのですが・・・、
もし・・、すこしでも嫌な思いをするようだったら・・
そう言ってください・・、私・・、覚悟を決めますから…」

少し改まった表情で千春が話しています。三郎が笑って手を振り、千春の懸念を否定しています。

「興奮していたとはいえ・・・・、
私・・、あの人にキッスをしてしまった・・・。
女の人にあんなに夢中でキスをするのは初めてだった・・・。
あの方もそれに激しく応えてくれた・・・。
恥ずかしかったけれど、気持ちよかった・・・・」

「女同士で激しいキッスか・・・
うん・・、猟奇的なシツエイションだね・・・、
近くに住んでいる人なら、また会えるかもしれないね…、
街で偶然会ったなら、どうするの・・」

「私・・、声を掛けて・・・、
これからはお友達になってくださいと言う…、
三郎だって、会えば虜になるよ、きっと・・・
絶対・・、仲良くなりたい方だよ・・」

「ほう・・、相当惚れこんだもんだね・・」

窓の女に浮気の現場を見られたにもかかわらず、あろうことか、その女と千春はすっかり打ち解け
あって話し込み、心を通い合わせ始めているのです。女同士そんな付き合い方もあるものだと・・、
心温まる思いで三郎はその話を聞いていました。