フォレストサイドハウスの住人達(その10)
5 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(269)
鶴岡次郎
2015/01/21 (水) 15:50
No.2640

どこかの娼婦宿で恥ずかしいプレイに溺れている夫の姿を見て、幸恵は自分がそのプレイを旦那にして
やれなくて申し訳ないと、意外な言葉を吐いているのです。その言葉を聞いて、興味深げに幸恵を観察
していた佐王子が、何かを感じ取った様子で、軽く頷いて、ここでゆっくりと口を開きました。

「奥様は、ご主人の好みに合うように、ご自身を変えたい・・、
そう思って、私に相談されたのですね…」

「ハイ・・・、
最初からそう思っていたわけではありません・・・、
こうして、千春さんや佐王子さんに愚痴を聞いていただいているうちに、
私の気持ちがはっきり判ってきました…。

佐王子さんに変身したいのかと聞かれて、
ようやく、私の気持ちがそこにあることが判りました・・!

出来ればそうしたいと思っています・・・、
主人が喜ぶ女になりたいと思います・・。
私のような女が、こんなことが出来るようになるでしょうか・・」

「女の人を男性の好みに合わせていろいろ指導することを、
私たちの業界では「調教」と呼んでおります。
私自身はこの言葉は嫌いですからあまり使いませんが、
勿論、この種の仕事の依頼もたくさん受け付けております・・」

「調教ですか・・」

「そうです・・・、
動物使いが手塩にかけて、動物を飼い馴らすときに使う言葉です。
愛人や妻を、好みの女に変えることにもこの言葉が流用されているのです」

「調教と言うからには、若くて、何も知らない動物が対象でしょう・・・、
私の様に、長年の澱が溜まった女は調教の対象にならないでしょう」

「今日お会いして奥様の人柄、性格が良く判りました。
結論から先に申しあげると、失礼ながら・・・、
奥様を旦那様好みの女性に仕立て上げるのはそんなに難しくありません、

三ケ月・・、いや、一ケ月でも可能かもしれません。

その期間、私どもの店に勤めていただき、一から訓練を受けるのです。
卒業の頃には、旦那様が泣いて喜ばれる女になっています。
多分、奥様であれば、このビデオの中の女など問題にならないほどに変貌します」

「本当ですか…、
そうだと、本当にうれしい・・・」

幸恵が涙を流すほど感動しています。

「一ケ月になるか、三ケ月かかるか、やってみないと良く判りませんが、ご自宅から通うことはできま
せん。24時間訓練となりますので、私の店に近いアパートに下宿していただきます。まさか、今から
修行に出かけるから当分家を留守にすると、ご主人に断わって出かけるわけには行きませんので、形の
上だけの話ですが、家出をしていただくことになります。

落ち着き先や当面の衣類や生活必需品は私の方で手配しますから奥様は身一つで家を出てください。そ
れに、この訓練に必要な経費はすべて奥様が私の店で稼ぎ出していただくのが前提になっていますので、
お金も持ち出す必要はありません」

佐王子はかなり具体的な内容を話し出しています。

「すべて、お任せします・・」

側に居る千春が驚くほど素直に、幸恵は佐王子の提案を全面的に受け入れているのです。