フォレストサイドハウスの住人達(その10)
49 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(313)
鶴岡次郎
2015/04/29 (水) 18:15
No.2687

「やはりそうなんだね・・、
お前は隠し事が出来ない質だから・・、
顔に書いてあるよ・・、
あのアパートで何人かの男に抱かれたね・・」

「すみません・・・、
仕事の流れで・・、つい・・・、
他の場所で会うよりは罪が軽いと思って…
別の部屋にいる姉さん達も盛んにやっていたので…
つい・・、その気になって、やり始めたら、止められなくなって・・、ずるずると・・・。
本当にすみません・・・・」

上から見ている佐原の優しい視線にほだされて、幸恵は素直な気持ちになって白状しています。笑みを
浮かべた表情を変えないで、佐原が頷いています。

「まあ・・、仕方がないよ・・、
仕事をうまく回転させる上で、接待は欠かせないからね・・、
ところで・・・、
当然・・、佐王子さんも迎え入れたのだろう…」

「・・・・・・」

さりげなく一番気になっていることを質問しています。話したくない急所を突かれて幸恵はまた返答に
詰まっています。それでも、ここまで話が展開すれば隠しても無駄だと思った様子で、素直に話し始め
ました。

「何でもお見通しなんですね…、
ハイ・・・、
最初の頃・・、私の様子を見に来て、そのまま・・・、朝まで・・、
でも・・、最近は全く来てくれません・・。
私は拒否していないのですけれどね…」

初めて店に出た頃、幸恵の身を案じて、佐王子は幸恵のアパートを何度か訪ねて、部屋で仕事のマナー
などをみっちり教え込んだのです。そのかいあって幸恵は数日でその仕事になれることができたのです。
しかし、仕事が順調に進み始めると佐王子が幸恵のアパートを訪ねることはなくなっていたのです。

「よく出来た雇い主だね…、
店の子とは厳しく一線を引いているのだね…」

「そうね・・・、
そんなに厳しく線を引く必要はないと思うけれどね・・」

どうやら佐王子がアパートに来ないことで、幸恵は多少不満を持っている様子です。幸恵の言葉が聞こ
えないふりをして、佐原は次の話題に移りました。

「二つの生活拠点を持つことになれば、お前も忙しくなる・・、
身体が一番だから、無理をしないようにするといい・・、
週に三日程度、自宅に居てくれれば、僕は構わないから・・」

「ありがとうございます…」

「アパートに男を迎えることも、無理に制限する必要はない・・、
流れに任せて、今まで通りやると良い・・、
あのアパートにいる限り、お前は独り身だと思えばいい・・。
僕も時々部屋へ通うことにするよ・・、
その時は、安くしてほしいね・・、ハハ・・・・」

「ハイ、ハイ・・・、
承知しました・・・。
私・・、売れっ子だから・・、必ず事前予約してね・・、
嘘、嘘・・、
あなたならいつでも歓迎よ、他の客を追い出すから・・」

二人は体をぶつけ合ってふざけています。

「ただ・・、判っていると思うが、
若い男に騙されて・・、
突然、僕を捨てるのだけは勘弁してほしい・・、
出来ればそうなる前に、丁寧に教えてほしい・・・、
ハハ・・・・」

「もう・・・、
そんなこと・・・、考えたこともありません・・。
それより、あなたこそ・・、.
以前の様に他の店に行かないでくださいね、
その気になったら、店へ来て、私を指名してください・・、
特別に、お店以外でも指名に応じますから・・、フフ…」

自宅がある公園駅に着くと、二人は大きな声を出して、笑いながら家路をたどりました。星がこうこう
と輝き、明日も晴天が予想される空模様です。