フォレストサイドハウスの住人達(その10)
3 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(267)
鶴岡次郎
2015/01/19 (月) 14:14
No.2638

千春の提案に少し驚きながら、少し間をおいて、そしてどうやら納得した様子で、幸恵が何度も頷いて
います。そして、ゆっくりと口を開きました。

「そうね・・・、
私一人ではどうにもならないことだし・・・
お恥ずかしい話だけれど…、
お願いしようかしら・・」

幸恵は決心したようです。

「少しお待ちください・・、
自宅へ戻って、ご相談する資料を整えて、持ってきます・・」

少しの間をおいて、幸恵はなにやら大きな布製のバックを抱えて戻ってきました。

「主人のパソコンなんですけど…、
先日・・、偶然・・・、
こんな映像を見つけてしまったのです・・・・」

不慣れな指さばきで、ようやく幸恵は目的のファイルを開きました。

「私がパソコン教室へ通って、何とかパソコンを操れるようになったことを主人は知りません。
だから、主人は無防備にこんなファイルを保管していたのです・・・」

わずか10分足らずのクリップで、撮影日付から一ケ月程前に撮られたものであることが判ります。ど
うやらプロに近い撮影者が撮ったビデオで、はっきりした映像で人物の表情も良く判ります。

「さすがですね…、
こんな映像を見ても、佐王子さんは驚かないのですね…」

冷静に映像を見つめている佐王子の姿を見て、幸恵が思わず感嘆の声を出しています。幸恵から事の次
第を聞いている千春でさえ、今日初めて見る映像に眉をひそめているのです。

「ハイ・・・、
私にとってはこの種の映像はそれほど異常なものでありません・・。
商売柄、日に何度もこうした景色と遭遇することも珍しくありません・・」

「そうですか・・・、こんな景色は珍しくないのですか・・・、
それを聞いて、何となく嬉しくなりました…
主人はそれほど異常な男ではないのですね・・・」

安どの表情を浮かべ幸恵が微笑んでいます。