フォレストサイドハウスの住人達(その10)
23 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(287)
鶴岡次郎
2015/03/02 (月) 14:52
No.2659
珍しく、二人の女の口が止まったままです。

「幸恵さん失踪の真相解明に一歩近づいたけれど、
私達が掴んでいる情報だけでは、動きようがない・・
しばらくは静観するより他に手はないようね…」

あきらめた口調で由美子がつぶやきました。

「うん・・・、仕方ないね…、
今日、私たちが話し合ったことは佐原さんには当分伏せておいて、
しばらくは・・、佐原さんを慰めることに専念しよう・・・
私も・・、おしっこを掛けてみようかな・・、フフ・・・・」

「それが良いかも・・、
次は愛さん一人で行くといいよ・・
佐原さんもきっと喜ぶと思う…」

由美子が真顔になって言っています。

「ちょっと・・、冗談よ、冗談・・・
そんなこと主人が許すはずがありません・・、
とても由美子さんの真似は出来ません…」

「それも、そうだね・・、ハハ・・・・」

「そうよ・・、残念だけれど・・・、フフ…、
それにしても、残念ね…、
ここまで真相に近づいていながら、
佐原さんを助けることが出来ないなんて…」

「・・・・・・・・」



週末に二人そろって佐原を訪ねる計画は今まで通り続けることを確認してその日二人は別れました。迷
いに迷ったのですが、由美子は結局、幸恵が時々自宅へ戻っている重要な事実を愛には教えませんでし
た。愛の性格を考えると、そのことを知れば、佐原にその事実を伏せたまま平然と彼と面談することが
難しいと判断して、その事実を由美子の胸の中にしまっておくと決めたのです。当然のことながら、佐
原には当分の間その事実を隠しておくべきだと由美子は考えているのです。


佐原から幸恵探索の依頼を受けた寺崎探偵事務所の調査も暗礁に乗り上げていました。熟年夫妻のトラ
ブルですから、案外簡単に解決すると思っていたのです。幸恵が身を隠しそうな親戚縁者、友人達を当
たればすぐに幸恵を探し出せると踏んでいたのです。ところが依頼を受けてから一週間、そして三週間
経っても幸恵の姿はどこにも見当たらなかったのです。

ここへ来て寺崎探偵は幸恵失踪の理由が単純な夫婦間トラブル、例えば夫に女が出来たなどの理由でな
いとようやく悟り始めていました。

幸恵失踪から8週間が経過しました。さすがにニケ月も不在が続くと幸恵の親族も騒ぎ始めてきました。
佐原も焦り始めていました。当然寺崎探偵へもきつい追及が来ることになるのです。