フォレストサイドハウスの住人達(その10)
22 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(286)
鶴岡次郎
2015/02/27 (金) 14:11
No.2658
「良いい!
私の考えを話すから聞いて・・・、

幸恵さんは佐原さんの変態癖にある時気が付いた・・・、
そのことを知って、嫌気がさして・・、・・と言うより、
変態癖そのものより、そのことを口実にして、
他の女と遊んでいることが許せなくなったのよ、

それで・・、離婚覚悟で家を出たのよ・・。
きっとそうだと思う・・」

思いついたことを愛が興奮した口調で話しています。

「佐原さんは幸恵さんの失踪理由が判らないと言っていたけれど、
本当にそうかしら…、私は違うと思う・・。

彼の変態癖が高じて浮気に走っていたとすれば、
幸恵さんにとって、このことは家出の大きな理由になる。

佐原さんは本当に、幸恵さん失踪の理由に気が付いていないのかしら…、
一緒に住んでいたのだから、
彼女の様子からある程度の心当たりはあるはずだと思うけどね・・・」

「私もそう思ったから、それとなく佐原さんに聞いてみた・・・、
でも、幸恵さんは気が付いていないはずだと佐原さんは言い張るのよ・・、

もし・・、気が付いていたのなら、黙って失踪するはずがないと言うのよ、
勝気な幸恵さんの性格を考えると、
泣き寝入りして家出することなど考えられなくて、
佐原さんの変態癖を直接追及するか、
それが出来なくても置き手紙を残すはずだと言うのよ・・。

もっともな意見だと思ったけれど・・・、
それでも幸恵さんの失踪に佐原さんの変態癖が直接に、
あるいは間接に、絡んでいると私は思っている・・・」

「わたしもそう思う・・・、
ねえ・・・、どうだろう・・、
幸恵さんの失踪は佐原さんの浮気が原因だと彼に教えてやろうよ・・、
彼だって、私達から言われれば、踏ん切りはつくと思う…、
そうすれば、そのことを踏まえて彼なりに行動すると思う…」

「それは出来ない・・・、
佐原さんが浮気をしていると断定する証拠がない・・、
判っているのは、佐原さんが変態癖を持っていることだけよ、
変態癖と言っても、離婚の対象になるほどものではないしね…、
他の女と遊んでいると想像できるけれど、何も証拠がない・・。

仮に、佐原さんの変態癖が原因だとして、
そのことで幸恵さんがどのような問題を抱えていたのか・・・、
変態癖そのものに嫌悪感を持ったのか…、
あるいは・・、他の女と関係を持ったことが許せないのか…、

そして、一番大切なことなんだけれど…、
家出することで、幸恵さんが問題をどう解決するつもりだったのか、
何が目的で失踪したのか、そこのところが私には判らない…、
賢明で、分別のある年齢に達している彼女が、やみくもに家出するはずがない、
彼女なりに何らかの勝算があったはずだと思う…。

何も判っていないこの状態で、早合点して、幸恵さんの家出は佐原さんの浮気だと決めつけ、
佐原さんを刺激するのは危険だと思う・・。
ここは、女同士・・、
彼女の置かれた立場と彼女の考えを尊重すべきだと思う、
軽率な動きをすると取り返しのつかないことになる・・」

「そうね…、幸恵さんの気持ちが大切ね・・
離婚など、全く考えていない可能性だって高いからね…、
私たちが下手に動いて、無理やり別れさせることになっては、
それこそ取り返しがつかないからね・・・」

「幸恵さんに会うことが出来れば一番良いのだけれど」

「そうね・・、彼女に会うことが出来ればいいね・・、
どこに隠れているのだろう・・」

二人の女の会話はここで行止まりました。顔を見合わせ大きな吐息をついています。