フォレストサイドハウスの住人達(その10)
15 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(279)
鶴岡次郎
2015/02/09 (月) 15:35
No.2650

変態癖を由美子に知られた直後はどこか怯えている様子が見え、由美子の言動に必要以上敏感に反応し
ていたのです。ところが、変態癖を持つ男にはそれなりの事情があるのだと理解を示し、佐原の行為を
黙って受け入れると言う由美子の話を聞いたせいでしょうか、佐原の表情にゆとりが戻り、普段通り、
出来る男の表情を取り戻しています。

「由美子さんのお話を聞いて、何か憑き物が落ちた気分です。
そんなに恥じることではないと自分に言い聞かせているのです・・。
これからは、この妙な癖との付き合い方を、
私自身、少し考え直すべきかなと思い始めています・・」

「そう・・、それが良いと思います…、
色々な愛の形があっても、いいのだと思います・・」

どうやら、由美子は佐原の心の闇に一筋の光明を投げかけたようです。

「ところで・・、
少し立ち入ったことを聞いても良いですか・・」

「はい・・、何でも聞いてください…」

「佐原さんの変態癖を、奥様はご存じなのですか・・・?」

「・・・・・・・」

黙って佐原が首を横に振っています。

「そう・・・」

由美子がそこで口を止め、何事か考えているようすです。

「奥様の家出に心当たりはないと、先ほど聞きましたが・・、
佐原さんの変態癖を奥様が知ったことが原因だと思いませんか・・」

「ハイ・・・、最初はそうかもしれないと思いました・・、
しかし・・、私の変態癖を知り、生理的な嫌悪感を持ったとしたら、
家出をするより、離婚を彼女なら選びます。
中途半端なことはしない、あいつはそういう女です。

仮に、100歩譲って、嫌悪感と怒りに任せて家出をしたとしても・・、
家出をする前に、私へ一言あっても良いと思います。
書置きを残すことだって出来たはずです…。
幸恵ならきっとそうするはずです…。

それで・・、
何も言わないで家出したのは、別の要因があると考えたのです・・。
多分・・、幸恵は私の奇妙な癖に気付いていないと思います・・」

すこし自信なさげに、それでも佐原は言葉を選びながら話しました。どうやらこのことでは相当悩ん
だ末、今、口にした結論に到達している様子なのです。