フォレストサイドハウスの住人達(その10)
14 フォレストサイドハウスの住人達(その10)(278)
鶴岡次郎
2015/02/04 (水) 12:23
No.2649
通り過ぎて行った男達の顔、その姿を頭に描き、うっとりと表情を緩めている由美子を見て、佐原は少
し妬ける気持ちになっています。

「由美子さんとはもっと早く会いたかったな・・・、
たくさんの男の中には私のような変態もいたのですね…、
それで、私を一目見て、こいつは変態だと勘づいたのですね…」

「そうとおりよ・・・、
普段は紳士的なふるまいをする人が、
ベッドではがらりと変わるのを何度か見て来た・・

この人も・・、もしかして、そうかな・・と疑った・・、
それを確かめるため、頬を打(ぶ)ってみることにした・・・、
間違っていれば、謝るつもりだった・・・」

「・・・・・・・」

「ところが・・、打(ぶ)たれているのに・・、
アソコを・・・、 いえ・・、恍惚とした表情を浮かべているのを見て、
女から苛められるのが好きな人だと思った・・・・」

「頬を打たれながら、由美子さんに私の癖を気づかれたと悟りました。
そうではないふりをするつもりでしたが、体が動きませんでした・・。
由美子さんにぶたれて、私は夢心地になっていたのです・・」

「そのようね・・、
じっと耐えているのを見て、MもM、真正のMだと判った。
それなら、最後まで攻めて、本音を聞き出すことにしたのです・・」
 
「実を言うと・・、私は自分の変な癖を凄く恥じています・・・。
こんな体になった理由はそれなりにあるのですが、そのことも含めて、
私はこの件はひたすら隠し通して来ました・・」

「そんなに隠す必要はないと思う・・。
威張れることではないけれど、
かといって、そんなに恥じることでもない・・・・・・・」

由美子が首を傾けて、不審そうな表情で言っています。
 
「由美子さんは不思議な人ですね・・、
秘密を知った後も、軽蔑するどころか、
恥ずかしい癖を持った私を一人前の男として扱ってくれています。
今となっては、あなたに秘密を握られたことをむしろ喜んでおります」

「私だって、若い頃は変態じみた行為を好む男は正直言って嫌いだった。でもある時から考えを変えた。
裸の付き合いをすると相手の性格が見えてくると言うでしょう。セックスは文字通り裸になって、全身
を濡らし、互いに喘ぎながら、我を忘れて絡み合うものでしょう、これ以上の裸の付き合いは他にない。
セックスをすると普段の付き合いでは見えないものが見えてくることに気が付いたのです・・。

女を抱く時、男はその女に普段は見せない彼の本質をさらけ出すものだと気が付いたのです・・。乱暴
な男、変態じみた抱き方をする男、優しく抱いてくれる男、それぞれ特徴があるけれど、共通して言え
ることは、その瞬間、男達は全てをさらけ出しているのよ・・。

抱いた女だけに見せる姿に、その男が生きて来た歴史が隠されているのだと思えるようになったのです。
そんな男達を可愛いと思った。どんな男であれ、その瞬間、私だけに本音をさらけ出している相手に優
しく接するべきだと考えるようになったのです・・」

「そうですか・・、それで良く判りました…。
男と女が裸になって絡まり合うと、意外と本音が出るのですね・・。
由美子さんはそうした男の本音を正しく理解し、
尊重したいと考えているのですね・・・」

「・・・・・・・・」

由美子が微笑みを浮かべて黙って頷いています。