フォレストサイドハウスの住人たち(その8)
9 フォレストサイドハウスの住人たち(その8)(197)
鶴岡次郎
2014/07/10 (木) 10:29
No.2557

千春の表情から余裕が消えました。燃えるような瞳で男を見ているのです。ようやく男も千春の変
化に気が付いたようで、驚きと多少の怯えが入り混じった複雑な表情を浮かべ千春を見ています。

「ああ・・、私…、
とっても欲しくなってきた……、
我慢できない…、
ああ・・・・・」

「・・・・・」

千春は両手で股間を押さえて、じっと何かに堪えている様子見せているのです。さわやかな朝日が
差し込むダイニングで、女が股間を押さえて悶えているのです。かなり芝居がかっていて、男の反
応を確かめながら演じているのですが、哀れな男はそのことに気が付きません。びっくりした表情
を隠さないで、女の様子をおろおろしながら見つめているのです。

女が欲情しているのは男にも十分理解できているのです。しかし、昨夜から早朝に続いた激しい戦
いで消耗しつくした男の体力は底を着いていて、女と戦う余力はどこにも残っていないのです。

冷静に考えれば昨夜から今朝に至るまで、浦上は並の男では到底できないにサービスをし遂げてき
たのです。戦う体力が一時的に失われていても、誰に非難されることはないのです、どっしりと構
えていればいいのです。しかし、情欲に抗しきれなくて、身もだえする女を目の前にして、自身の
体が何も反応しないことを知った男は、かなり焦っていました。

〈千春は・・、また、また・・・、欲情している・・、
だんだんに激しくなる・・、
僕の体力は底を着いてしまった…
どうすればいいのだ・・・〉

女の底知れない情欲を見せつけられ、男は、改めて、自身の無力さをひしひしと感じ取っていまし
た。 男が狼狽えているのをしり目に千春の悶え方はますます激しくなりました。もう・・、男の
姿は目に入っていない様子です。

突然立ち上がり、ワンピースの裾を胸までまくり上げ、白いショーツの中へ、いきなり右手を突っ込
みました。激しく右手をショーツの中で動かせています。もう・・、隠微な音がソコから発せられ
て、浦上の耳に届いていました。

「ああ・・、我慢できない…、
あなたには・・、すべてを知ってほしい・・、
少し恥ずかしいけれど、私の本当の姿を見てもらうわ…、
ゴメンナサイ・・・」

股間を両手で押さえたまま、小走りで寝室へ向かいました。あまりのことに浦上は声を出すことも、
千春の後を追うことも出来ないのです。しばらく間を取って、浦上は立ち上がり、ゆっくりと寝室
へ向かいました。

寝室の扉は開いたままでした。中から、千春のすすり泣く声が聞こえます。悲しみで泣いているの
でしょうか・・、そうでないことは、浦上にもすぐに判りました。

浦上はゆっくりと寝室へ入りました。部屋に入れば男の務めを果たさねばならないことは判ってい
るのです。残された体力はゼロです。それでも、千春の本質を最後まで見届けるつもりで、浦上は
ゆっくりと歩を進めているのです。

〈たとえ・・、千春にここで食い殺されてもいい・・
男として、逃げるわけには行かない・・・・〉、

この時、浦上は、仕事のことも、子供のことさえ忘れ、ただ千春の体だけを考えていたのです。少
し大げさに言えば、死さえも覚悟して、千春の体に挑む覚悟だったのです。