フォレストサイドハウスの住人たち(その8)
8 フォレストサイドハウスの住人たち(その8)(196)
鶴岡次郎
2014/07/08 (火) 13:53
No.2556
ぎりぎりまで追い込まれた浦上の緊張した表情に比べ、千春は笑みさえ浮かべ余裕の表情です。浦
上をどう料理して、攻略するか、作戦を練っているように見えるのです。浦上の問いかけに千春は
一呼吸おいて答えました。 

「ハイ・・・・
悪いと判っていながら、手を出してしまいました・・・・
私は・・、スケベーな、悪い女だと思います…」

「・・・・・・」

千春が笑みを浮かべて、あっさりと、悪行を認めています。女は男の反応をじっと見つめています。
浦上が困惑した表情で、千春を見ています。それ以上責めると男泣き、し始めかねない様子です。

「知りたい…?
私が何をしたか・・・、
私の本当の姿を知りたい・・・・?」

いたずらっぽい表情を浮かべ千春が聞いています。浦上は困惑した表情で千春を見つめています。
簡単に頷くことが出来ないのです。

「私の本当の姿を知れば、私を嫌いになるかもしれない、
私は三郎さんに本当の私の姿を知ってほしいけれど、 
知るのを三郎さんが拒否するのなら、これ以上は話さない…。
どちらを取るか、三郎さんが決めてほしい…」

この時点で、この場の雰囲気を女が完全に支配しているのです。男は哀れなしもべの様に女に向
かって頭を垂れているのです。事実を聞きたい気持ちと、それを知るのが恐ろしい、二つの相容れ
ない感情が男の中で渦巻いているのです。

「千春の話を聞きたい…」

「本当・・・・! 
うれしい・・、もし・・、聞きたくないと言われたら、
私・・どうしていいかわからなかった・・」

女の本質を知りたい気持ちが勝ったようで、男は覚悟を決めた表情で女を見つめ、そして、はっき
りと頷いているのです。

「本音を言えば、聞きたくない気持ちの方が強い、
しかし、それではいつまで経っても千春を理解することが出来ない、
この日が来るのは千春と結婚した時から覚悟を決めていたことだったのだ。

さあ…、何もかも洗いざらい話してほしい…、
どんな話を聞いても、僕はしっかり受け止めることが出来ると思う…」

女の本質を知りたいと願いながら、それを知るのを恐れ、躊躇し、ついには覚悟を決めて女の正体
を知る道を選んだ男の気持ちが女には手に取るようにわかるのです。男の熱い瞳が女に語り掛けて
いる内容を千春ははっきりと読み取っていました。

〈千春・・・、
お前がどんな女であっても・・・、
お前がどんなに破廉恥なことをしても・・・、
僕はお前を愛しつづけるつもりだ・・。
そしてこの僕の気持ちを、お前が大切に思ってくれるなら、
僕は、どんな試練にも耐えることが出来る。
何も隠さないで、ありのままのお前を見せてほしい・・・・〉

女の瞳が甘く潤んで来ています。こんな表情を千春が見せると危ないのです。下半身から甘い疼き
が広がり、もう耐えられないほどの疼きが全身を侵食し、女の頭から理性を奪い始めているのです。