フォレストサイドハウスの住人たち(その8)
7 フォレストサイドハウスの住人たち(その8)(195)
鶴岡次郎
2014/07/03 (木) 11:39
No.2555

浦上と会話をしながら千春は驚きを抑えきれませんでした。

〈私が変わったと三郎さんは言うけれど、
今日の三郎さんこそ、これまでとは全く違っている…。
何かが三郎さんを目覚めさせたに違いない、うれしいことだ・・。

朝からこんな艶っぽい話をする三郎さんを初めて見た…、
寝室では嫌らしいことをいっぱい言うくせに、
昼間はほとんど口を開かないか、口を開けば仕事と子供の話ばかり、

仕事が忙しくて私とゆっくり話をする機会がないことも事実だけれど、
本当は・・、二人きりになれば、こんな淫らな話をたっぷりしたかった…〉
 
これまで三郎との普段の会話の中で艶っぽい話が出たことはなかったのです。千春はあきらめてい
ましたが、時には寝室以外でも甘い戯言を交わしながら、たわむれたいと思っていたのです。三郎
がその気になっているのなら、この機会を逃すべきでないと千春は悟りました。

「ここまで話したのだから…、全部話すね…、
本当はまだ三郎さんには隠しておくつもりだった・・・
恥ずかしいけれど、全部話すから、嫌いにならないでほしいの…」

ここで千春は少し間を取って、話すべき内容を頭の中で整理している様子です。一方浦上は、最後
通告を宣言される囚人の様に両手を膝の上において、畏まって千春を見つめています。

「6ケ月ほど前から・・、欲望が一段と強くなった・・、
自分でも抑えきれない、恐ろしくなるほど、強い欲望が湧き出てきて…、
恥ずかしいけれど、アソコを掻き毟らなくては居られなかった・・・、

それでも、あなたが家にいてくれる間は、たとえ、抱いてもらわなくても、
あなたの側に居て、あなたの顔を見て、匂いを嗅ぐだけで・・・、
安らかな気分になっていた…」

浦上はじっと耳を傾けています。千春は恥ずかしそうに身を縮める様にして話しています。

「あなたが出張で居なくなり、
抑えが利かなくなって・・・・、
悪いことだと判っていながら・・・、
とうとう・・、手を出してしまった・・・・」

遂に禁断の行為に走ったことを千春は告白しています。恐れていたことが現実になり、頭の中が
真っ白になり、口がからからになり、浦上は怖い顔をして千春を睨み付けていました。

「そんな怖い顔をして睨み付けないで…、
これでも・・、私…、
精いっぱい、抵抗して・・、頑張ったんだから…」

「それでも、手を出してしまったのだろう…」

「そう・・、三郎さんが居ないせいよ、
普段なら、絶対そんなことはしない・・、

あの日・・、あの子を送り出した後・・、家事をしながら、
こみ上げてくる欲望と必死で戦っていた・・・。
でも・・、ダメだった・・・・、

体中の血が煮えくり返るようなハイな気分になり・・、
アソコは滴るほど濡れていて、蠢き、恥ずかしい音を出していた…
これ以上我慢したら、気が狂うと思った…」

「それで・・、
悪いことだと知りながら、
それに・・・、手を出したのだネ・・・」

浦上が絞り出すような声で詰問しています。キッチンのシンクに両手を置いて、頭を下げ、両脚を
震わせながら、秘部から湧き上がる欲望と必死で戦っている千春を浦上は想像していたのです。そ
れでも、千春が何に手を出し、どんな体験をしたのか、この時、浦上は想像さえできていなかった
のです・・、いや、男の存在を疑うことは簡単に出来たのですが、その事実を浦上は彼の頭の中か
ら急いで追い出していたのです。