フォレストサイドハウスの住人たち(その7)
3 フォレストサイドハウスの住人たち(その7)(167)
鶴岡次郎
2014/05/14 (水) 16:23
No.2522

ここで何かを思い出した様子で、春美は周りを見渡し、二人以外誰もいないことを確かめ、それで
もなお声を潜めて千春に質問しました。

「ところで・・・、お婿さんは・・、
その…、千春のことをどこまで知っているの…」

「全部知っている…」

「全部って・・、
じゃ・・、売りのことも知っているの?」

「うん・・・」

「信じられない…、
どうしてそんな話をしてしまったの…」

あいた口が塞がらない・・、そんな驚きの表情を春美が見せています。

「驚きを通り越して、バカとしか言えない…。
そんな話をすれば、まとまる話もぶち壊すことになる…。
判った…、もしかして・・、
千春は彼に出会った最初から、結婚を考えていなかったのでしょう・・・」

「うん・・・、一生、普通の結婚はできない女だと思っていた。
その時も、若くてイケメンだったから、ちょっとからかうつもりで、
私・・・、スケベなところをいっぱい見せてしまった・・・。
少しでも彼の気を引くつもりがあれば、
もう少し、お嬢様らしく振る舞うことだって出来たのだけれど・・」

「パンチラをしたり、
揚句は、股間に手を伸ばしたのでしょう・・、
救いようのないバカ女ね・・・・」

「そうなの・・・、
調子に乗ってからかっていたら、
気が付いたら、あそこを咥えていた…」

「あら・・、あら・・・
それで、結婚までよく漕ぎ着けることができたね・・・
どんな手を使ったの・・・・」

「私は最後まで彼との結婚を考えていなかった。
だって、佐王子さんの情婦(イロ)であり、
売りまでやっている私が彼のお嫁さんになることなど、
許されるはずがないことだし、
いくら、厚顔でも私にはそんなことはできないと思っていた。

その一方で、彼とのデートを重ねる内に、彼への思いを募らせていた、
こんな展開になるのだったら、処女だと言えないまでも、
もう少しお嬢様らしく振る舞うべきだったと激しく後悔していた・・」

しおらしく語る千春を見守りながら、春美は黙って頷いていました。

「彼のプロポーズを私はその場で拒否した。
理由は何も告げなかった…」

その時を思い出したのでしょう、千春の瞳に涙があふれています。春美が手を伸ばしそっと千春の
涙をぬぐっています。