フォレストサイドハウスの住人たち(その7)
25 フォレストサイドハウスの住人たち(その7)(189)
鶴岡次郎
2014/06/19 (木) 14:39
No.2547

二人になった浦上と千春は自宅へ向う電車の中で、のんびりと会話を交わしていました。理恵の墓
参りを済ませたことで、結婚式前に済ませておくべき準備がすべて完了したのです。塚原夫妻には
結婚後、機会を見つけて挨拶をする予定だったのですが、図らずも理恵の墓前で出会うことになった
のです。塚原夫妻と良い出会いができ、夫妻に結婚の報告と別れの挨拶ができたのです。これで思
い残すことなく結婚式に臨めると・・、浦上は上機嫌でした。


また千春は塚原夫人からとっておきの告白を聞くことが出来て、それはそれで満足していました。
すべてが順調に進み、若い二人は充実感と幸福感でいっぱいになっていたのです。

「塚原夫人と随分楽しげに話していたね・・、
どんな話をしていたの・・」

「私のお店の事や、お客様のこと・・
ああ・・、それに、私の男性経験を聞かれた・・」

「へぇ・・、
夫人とは初対面だろう…。
そんなことまで話すんだ、
女の人は凄いね…、
・・で、何と答えたの・・・」

「正直に言ったわ・・、
三郎さんが初めての人でないことも、
三郎さん以外の男性を複数知っていることまで話した」

「塚原夫人は驚いただろう・・」

「そんなに驚いていなかった・・、
私を見て、この女はある程度、経験を積んでいると判っていた様子だった。
そして、経験が豊富なことはいいことだと、笑って、励ましてくれた・・。
アッ・・、そう、そう・・、早く子供を作れとも言われた・・」

「子供をね…」

浦上が遠くを見る表情をしていました。彼の表情を見て千春には感じるものがあったのですが、そ
のことを無視して、陽気に次の言葉を出しました。

「私・・、
頑張りますと答えた…
子宝に恵まれたら、真っ先に連絡するとも言った…」

「夫人は・・、理恵のこと・・・、なんか言っていたの・・」

「理恵さんのことはお互いに意識して、話題にしなかった・・」

「そう・・、そうだったの・・」

「いい人達ね・・、理恵さんのご両親・・」.

「うん・・・」

それ以降、二人が理恵のことを話題にすることはありませんでした。