フォレストサイドハウスの住人たち(その7)
14 フォレストサイドハウスの住人たち(その7)(178)
鶴岡次郎
2014/06/05 (木) 13:52
No.2535

夫人の話はまだまだ先がありそうです。駅前で待っている男二人が少し焦れた様子で夫人と千春の
方を見ているのです。千春は気にしているのですが、夫人は一向に気にしている様子ではありませ
ん。

「今、理恵に必要なのは、あそこに異物を入れることに慣れることで、慣れてくれば、膣も広がり、
愛液も潤沢になり、スムーズに性交ができるようになると私は考えました。

この程度の結論を出すのに、茄や大根を持ち出し、
理恵の中に挿入していろいろ試したのですから・・、
千春さん…、
私たち親子の無知さ加減がおかしいでしょう・・・」

自嘲の笑みを浮かべて塚原夫人は話しています。

「なんとしても一人娘を幸せにしたい思いが強くて、私はあれこれ調べ、考えました。それで結局
行き着いた考えが、理恵の膣を拡大するため、大きなデルドーを買い求めることだったのです。街
のその種の店に出向き買い求めました。それを使って訓練させることにしたのですが、そんなバカ
な行為を誇り高い理恵が受け入れるはずがありませんでした。デルドーは一度も使われることなく、
私の家で保管しています。

デルドーの件もあって、理恵は私に頼ることをあきらめたようです。それ以来、私にはその話をし
なくなりました・・・。その後も私は気にはしていたのですが、母親といえど立ち入ることが難し
い夫婦の問題ですから、理恵から相談が来ない以上、私から声をかけることはできませんでした…」

深刻な話なのですが、千春には少し艶っぽいおとぎ話の様に聞こえていました。その一方で、デル
ドーの件で親子の会話が遠のいたことに、千春は少し違和感を覚えていたのです。

〈理恵さんはなぜそこで、お母様に相談することを止めたのだろう・・、
夜の夫婦生活まで親身に相談に乗ってくれる母親は少ない・・、
私なら・・、そこまでめんどう見てくれる母親の愛情をむげに断ることはしないだろう。
恥ずかしいけれど、そこは母と娘、余人にはできない話もできるはず。
夫婦の交渉のありのままを毎日のように報告して、母親と一緒に対策を考える道を選ぶと思うけれ
ど、理恵さんは、違ったようだ。頭が良くて、自立心の強い理恵さんだから、自分で切り開く道を
選んだのだ・・・〉

千春は三人の兄と二人の姉がいる末っ子に生まれました。商店を営む実家では母親とゆっくり話を
する機会が乏しく、年の離れた長女が母親代わりになって千春の面倒を見てくれたのです。それだ
けに一人子の理恵が母親の愛情を独占しているのを聞き、少しうらやましく思っているのです。

「理恵はつくば学園都市、三郎さんは東京と、離れて暮らしていて、会えるのは週末だけですから、
何も障害が無くても、二人のセックス回数は普通の新婚家庭に比べると少なかったと思います。

それが、楽しはずのセックスを苦痛に感じるのですから、結婚数ケ月後には理恵は研究が忙しいこ
とを口実に月に一度しか家に戻らなくなっていたのです。詳しいことは判りませんが、二人のセック
ス回数はかなり少なかったと思います。

そして、理恵はがんを患い、あっけなくあの世へ行きました。結局、理恵はセックスに喜びを感じ
ることなくあの世に召されたと思います・・・・。そして、三郎さんも理恵に女の喜びを与えるこ
とが出来ないまま死別することになり、悔しい思いをかみしめることになったと思います。

私がもう少ししっかりしていれば、理恵にあんな辛い思いをさせることはなかったのにと後悔して
いるのです・・・」

「・・・・・・・・」

理恵の結婚生活が上手くゆかなかったことにかなり責任を感じている様子で、塚原夫人は気の毒な
ほどしょげ返っているのです。なんと声をかけていいのか千春は困り果て、ただ黙って耳を傾けて
いました。

「こんな恥ずかしい話をしたのは、
あなたには理恵と同じ思いをさせたくないと思ったからです。

率直に聞きます・・・・。
三郎さんとのセックスをあなたは
十分楽しんでいますか・・」

「ハイ・・・、ご安心ください、十分すぎるほど楽しんでいます・・・。
先ほど申し上げたように、私・・、見かけ以上に男性経験が豊富なのです。
多分、私の経験を申し上げれば、理恵さんのお母様はびっくりして、
私を軽蔑することになると思います。そんな女なのです、私って…。

そんな私に、お心づかいいただき、実の母親でもそこまでは言えない親切なお言葉をいただき、
私、感謝の気持ちでいっぱいです」

「いえ、いえ・・、そんなに感謝されるほどのことではありません。
あなたを見ていると理恵が戻ってきたような気分になり、
ついおせっかいなことを言ってしまっただけのことですから・・・。

そうですか、お二人の間には何も問題がないのですね・・、
良かった・・、本当に良かった・・・」

かなり思い詰めていたようで、安どのあまり夫人は涙さえ見せているのです。