フォレストサイドハウスの住人たち(その7)
12 フォレストサイドハウスの住人たち(その7)(176)
鶴岡次郎
2014/06/01 (日) 16:03
No.2533

互いに結婚前の男性経験を告白して、秘密を共有してしまった女二人、二人の間に今までに感じな
かった親近感が芽生えていました。思った通り千春が見かけの年齢よりかなり経験豊富であること
に夫人は満足していました。一方、良家の奥様然とした夫人の意外な一面、多淫な千春とも話が合
わせられるほどさばけた一面を持ち合わせていることに、千春は驚きと同時に、強い親近感を寄せ
ていました。

夫人は今まで自分一人の中に閉じ込めていた秘密を千春に話す意欲をますます強くしていました。
この機会を逃したら、この秘密をお墓まで持っていくことになる、それではあまりに空しいと危機
感を持ったのかもしれません。夫人は一気に語り始めました。

「二人が新婚旅行から帰って来て、三ケ月ほど経ってから理恵一人で実家へ来てくれました。最高
に楽しい時期だのに理恵がなんとなく浮かない表情なのに気が付きました。

何も知らないまま結婚したので、そのことを心配していたので、彼女の様子を見て、夜の新婚生活
が上手く行っていないのだと、すぐ気が付きました。二人きりになって問いただすと、案の定、夜
の問題でした・・・」

歩きながら話す話題でないと思ったのでしょう、夫人は木陰に立ち止り千春に一歩近づいて話して
います。夫人の吐息を感じるほどの距離に立って千春は能弁に語る夫人の顔をじっと見つめていま
した。

塚原夫人はこの先、何を話したいのだろうと千春はやや当惑気味で、ぼんやりと夫人の意図を探って
いるのです。性的な話題を出したことで夫人は少し興奮しているのでしょう、それまで笑みを浮か
べて千春の聞き役に回っていた時に比べると、頬が色づき、表情も豊かになり、一段と女の魅力が
増しているのです。

「どうにも痛くて我慢できないというのです・・・。
ゴメンナサイね・・、こんな話・・・、
もしかするとあなたには不要かもしれないけれど、
同じ間違いをして欲しくないので、とにかく最後まで聞いてください・・」

千春が黙って頷いています。

「挿入は何とか出来るのですが、その部分に激痛が走って、先端部を受け入れるのがやっとで、全
部を受け入れることができないと言うのです。

新婚旅行先で上手く行かなくて、自宅へ戻ってから二人で話し合って、塗り薬を使ったり、セック
スガイドブックを参考にして、いろいろ試したらしいのですが、効果は芳しくなかったのです。

三郎さんもそれほど女性経験があるわけでなく、かといって病院へ行くのは恥ずかしいので、新婚
旅行から帰って来て三ケ月も経って居るのですが、そのままにしていると言いました。勿論、新婚
ですから、一緒に居れば抱き合います。一応、旦那様を受け入れるものの、その行為が理恵にとって
は苦痛以外何物でもなかったのです。

新婦がそんな風であれば、新郎もおのずと意気消沈します。おそらく二人の生活は甘い新婚生活と
はおよそかけ離れた、ぎすぎすしたものだったと思うのです」

「私の先輩に同じ症状が出て、病院で診察を受けたら、膣の筋肉に一部不整合が存在することが
判り、手術を受けて、正常な性交ができるようになったと聞いています」

「そうなんですって…、私も後になってそのことを知りました・・。結婚後は、夫以外の男性を知
らない環境で過ごして来ましたから、あなたの様にいろいろな情報を手に入れることが出来ないま
ま、歳だけは取ってしまったのです。それで、理恵の話を聞いても、最初は狼狽えるだけで適切な
アドバイス一つできなかったのです・・・」

その時を思い出したのでしょう、塚原夫人は大きな吐息を吐き出し、寂しそうな表情を見せました。