フォレストサイドハウスの住人たち(その6)
15 フォレストサイドハウスの住人たち(その6)(145)
鶴岡次郎
2014/03/30 (日) 13:59
No.2495

二人で熱い時間を過ごし、両親と住む自宅へ千春を送り届けた後、その帰り道、浦上は一人酒場に
入り、彼女のこと、そして二人の将来を考えるのです。そんなとき何より気になるのは彼女の卓越
したベッドワークです。亡妻とはもちろん比べものにはなりません、おそらく想像を超える男性経
験があると浦上は睨んでいるのです。

〈年に似合わず、すごい女だ・・・、過去のことは何も話さないが…、
これほどの女だ、いろいろなモノを背負っているのは確かだろう・・
もしかすると・・、今も特定の愛人がいる可能性が高い…

それにしても・・、どうして、
千春さんは何も隠そうとしないのだろう…、
むしろ、ベッドでは僕をからかっているかのように奔放に振る舞っている…〉

独身女性であれば、多少は自制して、奔放な経験を隠すのが当然だと浦上は考えたのです。

〈僕のことは何とも思っていないのだ・・、
金も、地位もない、僕のような若造は、
彼女にとって、遊び相手の一人にも加えてもらっていないのかも・・〉

高級靴店からの連想で、千春にはしかるべき金持ちの愛人がいるはずと、浦上は想像するように
なっていたのです。

〈とても、僕などが付き合いきれる相手ではない…、
早く別れるべきだろう・・・・、
でも・・、これから先、これほどの女性に会うことは、先ずないだろう・・
別れるには、あまりにも惜しい、
どうするか・・・・、行けるところまでやってみるか・・〉

千春と熱い時間を過ごした後、浦上は自身の心に毎回のように問いかけていたのです。このまま付
き合いを続けても、千春を自分のモノにすることはできそうもないと思えるのです。早くあきらめ
た方がいいと考えるのですが、千春とこのまま別れるという選択肢が彼の心のどこにも存在しない
ことは浦上には何となく判っていたのです。

一方、千春も今までのお客とは異なる若い浦上に強く惹かれていました。浦上がまず千春の体に取
り込まれたのとは逆に、千春の心がまず彼に靡いたのです。

確かに若い浦上の体は今までの男にない魅力秘めていましたが、何が何でもその体が欲しいとまで
は千春は思わなかったのです。性的な満足感であれば、浦上と同じ程度かそれ以上の快感を与えて
くれる男は他に何人もいたのです。

千春は同年代の女性と比較して、肉体関係の経験は豊富ですが、こと恋愛経験となると女子高生
だった頃の淡い恋愛だけなのです。勿論、肉体関係が深まるとその男が好きになるのは当然ですが、
千春の相手は妻子持ちの中年過ぎの男たちですから、千春が本気で恋をする対象ではなかったので
す。燃えるような恋心を抱く相手に今まで巡り合ったことがないのです。

浦上に会って、肉体交渉を続けるうち、千春の中に彼への強い恋心が生まれていました。彼に抱か
れるのはうれしいのですが、彼と食事をしたり、夜の街を一緒に散歩することのほうが千春にとって
はもっと楽しいことになっていたのです。

出会った最初の頃はベッドでは意識的に奔放に振る舞っていたのですが、彼への恋心が募ってくる
と、明るい照明の下で裸を見せることさえ恥ずかしく感じるようになっていたのです。最初は抵抗
なく口に含むことできた男根も、最近では、彼に見つめられているのが恥ずかしく、そっと唇をつ
けるのがやっとの状態になっているのです。

気持ちがいい時、お客たちが喜ぶのでそれが習慣になっていたのですが、大きな声で叫んでいたい
やらしい言葉も、二人の時は影を潜め、ただ可愛いいうめき声をあげるまでに変化していたのです。