フォレストサイドハウスの住人たち(その6)
11 フォレストサイドハウスの住人たち(その6)(141)
鶴岡次郎
2014/03/17 (月) 13:06
No.2491

結局、男は最後まで行きませんでした。その場で射精することもできたのですが、限界に近くなった
ところで千春の背中をたたき、そこまでで終えることを女に告げたのです。

「止めるの…?
最後まで行けばいいのに、もう少しだったのに・・」

中途で止められ女は少し不満そうな表情を見せています。

「ここまででも、僕にとっては大変な経験だけれど、
これ以上は、無理だよ…」

男の理性が店内でのこれ以上の行為を止めたようです。女は黙って男の指示に従いました。


「ありがとうございました。本当にお世話になりました・・。
お礼と言うには、とても足りないのですが、この靴をいただくことにします。
今日の記念に千春さんを思い出しながら、大切に愛用します・・」

身支度を整えた二人が少し照れながら微笑みを浮かべて見つめ合っています。男は給料の20%ほ
ど値になる靴を買い求めることにしたのです。室内には蒸れたような二人の体液の香りが充満して
いるのですが、もちろん二人は気が付いていません。

「お買い上げ、ありがとうございます・・、
喜んでいただけて、努力した甲斐がありました・・
それでは少々お待ちください・・・」

売上伝票とコーヒーそして特別に熱いおしぼりを準備して千春が戻ってきました。男がおしぼりを
使おうとしないので千春が使用を促しています。

「当分、お風呂に入らないし、顔だって洗わないつもりです。
あなたの香りに包まれて、暮らしたいのです…」

「あら・・あら・・、
嘘でもそう言われるとうれしい・・」

本当にうれしそうに千春が笑って答えています。

「あんなことをしてしまって、少し反省をしています。
お店の名誉のために言いますが、普段はあんなこと絶対しないのよ・・、

今日は朝から私・・、少し変だった・・、
女にはそんな日が月に何日か来るのよ・・、
そこへ、素敵な三郎さんが現れたわけなの…、
言ってみれば、半分以上は三郎さんが悪いのよ…」

千春が艶然と微笑んで、親しみを込めて男を名前で呼んでいます。既に名刺交換を済ませているの
です。

「ここで千春さんに会えたのは僕にとって本当にラッキーでした。
恥ずかしくて、医者にも行けないで、このまま僕の男が終わるのかと、
覚悟を決めていたのです・・・。

世の中がつまらなくなって・・、
このままだったら、僕は多分ダメになっていたと思います・・」

「とっても立派なモノだのに・・、
お若いのに、反応が薄いものですから、
私の魅力が乏しいせいだと・・、
つい・・、向きになりました・・。

正直に言うと、立派になった時は『やったー!』と思いました。
私のスケべーなところが、役に立ったのですね・・」

その日、佐王子の予定が入っていたのですが、それをキャンセルする連絡を入れ、千春は浦上の誘
いを快諾しました。そして、食事の後、むしろ千春が誘うようにして、二人は近くのホテルへ向か
いました。