フォレストサイドハウスの住人たち(その5)
30 フォレストサイドハウスの住人たち(その5)(130)
鶴岡次郎
2014/02/25 (火) 15:00
No.2476

「ところで・・、店長は何処まで知っているの・・・?
亜紀・・、大切なことだから、
知っていることを全部教えてちょうだい・・」

「ウン・・、そう言われてもね・・、
そんなに詳しく聞いたわけではないし・・、
そのお客もはっきりしたことは知らないようだった・・・、
それでも、店長は未だ具体的な証拠を掴んでいないと・・・、
私は思いたい・・・」

「たしかに・・、亜紀の言う通りかもしれない…、
店長が私達の行為をはっきり掴んでいれば、
大人しくしているはずがない、直接私達を追及しているはず、
今頃、私も、あなたも首になっていてもおかしくない…。
それが無いということは・・・、未だ店長は証拠をつかんでいないのよ」

「千春・・!・・ 頭が良い・・その通りだよ、
店長が私達に何も言わないということは・・・、
私達の秘密を裏付ける証拠を未だ掴んでいないということだネ・・・・

ああ・・、良かった・・、本当に良かった・・、
実を言うとネ・・、なにもかも店長に知られてしまったと、
心配で、心配で、仕事が手につかなくて…、
千春に相談しにやって来たのだよ・・」

今にも泣きだしそうな表情で亜紀が喜んでいます。

「だって・・、昨日・・・、
私・・、二週間ほどレスだったから、我慢できなくて、
お店の外ならバレないと思って・・、
お馴染みさんとホテルへ行って・・、朝まで・・・・。

今日、ホテルから直接出勤してきたところ、
別のお客様から店長が探偵を雇っている話を聞かされて、
てっきり、ホテルのことがバレたと思った・・、
もう・・、ダメだと思っていた・・・・

良かった・・、本当に良かった・・」

涙ぐみながら、顔をくしゃくしゃにして亜紀が喜んでいます。

「亜紀・・、安心するのは早い、そんな噂が立ったという事は、何か疑わしい気配を店長がつかん
だと思うの、それで店長はそんな淫らなことが起きないよう、もし既に起こっているのなら、それ
が公になる前に火を消したいと思って、監視を始めていると私は思うの・・。

もしかしたら、私達に少しは疑いを持っているから、監視を始めたとも考えられるけどね・・、
いずれにしても、ヤバイ状況なのは確かよ・・」

「エッ・・・、そうなの・・、どうして判ったのかしら・・、
誰か、チクッたのかしら・・?」

「そうではないと思う、薫ちゃんのセクハラ事件が店長をその気にさせたのだと思う。訓話で、よ
その店で店員がお客と怪しい関係に陥り、お店を閉鎖することになったと店長が話をしていたで
しょう・・。

薫ちゃんのセクラハ事件が起きてみると、こうした事件は何時起きてもおかしくなくて、むしろ今
まで起きなかったことが不思議だと店長は考えたと思うの・・。
そうであれば、いずれお客と寝る子も出てくるかもしれない、もしかすると、すでにお客とそうし
た関係に陥っている店員がいてもおかしくないと・・、店長は警戒を強めたと思う・・・。

それで・・・、私たちの注意を喚起するため、探偵を雇い、その噂話をわざと広めた・・。店長の
狙いは、『もし・・、やっているなれば、今のうちに足を洗ってほしい・・』と、私たちに伝える
ことなのよ・・・」

「そう・・、そうなのか・・
別の店で起きた事例から、自分の店を調べる気になったのね・・、
私たちの行為を暴くことが目的でなく、私たちに警報を発することなのね、
あの店長ならそう考えるでしょうネ・・・」

「亜紀・・、
私はもう・・、御客と寝るのは止めることにする。
良い事でないのは確かだし・・・、
恥ずかしい行為を暴かれてお店をクビになったら、生きて行けない・・・、
たくさんの男に抱かれる楽しみが無くなるけれど・・、
我慢出来ないほどではないし・・」

「千春が止めるのなら、私も止める・・
実を言うとね・・、
いつまでもこんなこと続けるわけには行かないから、
止めるきっかけを探していたの・・」

「じゃ・・、そうしよう・・」

「ウン・・」