フォレストサイドハウスの住人(その3)
21 フォレストサイドハウスの住人(その3)(65)
鶴岡次郎
2013/08/28 (水) 13:43
No.2396

加奈の表情が段々に厳しくなったのを見て、悠里が心配そうにしています。そして、加奈のご機
嫌を取るようにして口を開きました。

「売春と言っても、自宅でする仕事だし、先ほども言ったように、お客は身元がしっかりした紳士
だし、それに、変なことをさせる客が居ても、佐王子さんが私を必ず守ってくれるのよ・・。

ある時、私が嫌がっているのに、アソコの毛を無理やり剃ったお客が居た。そのことを佐王子さん
に言いつけたら、佐王子さんその場で私に頭を下げて謝ってくれた。そして、二、三日後、かなり
の金額を差し出して、そのお客からこの金を代償として出させたこと、今後出入りさせないし、し
っかり口止めもした、と教えてくれた。たぶん、そのお客はかなりのお金を出した上、恐い脅かし
も受けたと思う・・。

彼も言っていることだけれど、お金を得ていることを除けば、
私のしていることは、カラオケ店で知らない男に抱かれるのと、
それほど違わないと思う・・・、加奈もそう思うでしょう・・・?」

罪を犯して落ち込んでいるのは、どちらか判らなくなるほどです。渋い表情を隠さない加奈を、
笑みを浮かべた悠里がしきりに慰めているのです。

「私は加奈が心配してくれるほど惨めな気分ではない。
このままの生活を少し間なら・・、そうね・・、一年ほどなら・・、
続けてもいいとさえおもっている・・。

それにね・・、これは言いたくないことだけれど、
不景気で主人のお給料が上がらないでしょう、
いただくお金が家計に、とっても助かるのよ・・・。

いずれ、私の商品価値が下がって、彼もお客達も、私から離れて行くと思う、
それまで、せいぜい楽しむことにする。
だから、もしこんなに汚れた私でも加奈が嫌でなかったら、
これまでどおり、加奈とは仲良く付き会いたい・・・」

「嫌になるなんて・・、
どんな時でも悠里は私の大切な友達だよ・・」

「うれしい・・、加奈に嫌われたらどうしょうと思っていた・・。
いろいろ言ったけれど、私は平気だから、あまり心配しないで・・」

ことさら陽気な表情で、半分は本心を込めて、悠里が加奈を逆に慰めています。どう返事をして
良いか加奈は困り果てているのです。

いずれ佐王子が女を手放す時が来ると悠里は言っていますが、苦労して手に入れた女を竿師がそ
う簡単に手放すはずがないことは、素人の加奈にも良く判るのです。骨の髄までしゃぶられて、
ボロボロになって捨てられた時は、全てを失っていることになるのです。今の内に何とか救い出
す手を考える必用があると、加奈は焦っているのですが、そんないい案はすぐには沸いて来ない
のです。


「中国製の媚薬を使っていると言ったわね・・・、
その薬の銘柄判るかしら、出来ればサンプルがあれば良いけれど」

何かを思いついたようで加奈が質問しました。

「ウン、判るよ・・、今も持っているけれど・・、何に使うの・・・?
佐王子さんが自由に使っていいと言って、寝室に何本かチューブを置いて行った。
お客との時は勿論、旦那とやる時も使っているの・・、
もう・・、手離せない、コレを使うと天国へすぐに行けるの・・・。

それにね・・、男も元気になるのよ・・・、
信じられないほど、固くなるから・・、ふふ・・・・。

私って、本当にスケベだと思う。いつでもこうして持ち歩いている。
いざという時には使うつもりなの・・、
何処で男から声をかけられるか判らないでしょう・・・フフ・・」

本気なのか、冗談なのか判らない様子を見せて悠里が話しています。天性の淫乱というのでしょう
か、清楚な顔に似合わない淫らな言葉をちゅうちょなく使っています。加奈は少しあきれて、悠里
を責めることさえしなくなっています。

「男性のアレに塗ることもあるけれど、あらかじめ膣内に塗っておくともっと効果的よ・・、
加奈も試してみるといい、きっと病み付きになるから・・、フフ・・・」

うっとりと好色そうな瞳を輝かせて悠里が言っています。弱い薬ですから、禁断症状が出るほど
の麻薬ではなさそうですが、悠里はその魅力にスッカリ嵌っているようです。

悠里がバックから取り出した薬を受け取り、その日、二人は別れました。すべてを告白した悠里
は爽やかな笑みを浮かべて意気揚々と帰りました。一方、悠里から告白を聞かされて、重荷を背
負わされた形の加奈は大きな悩みを抱えたことになります、悠里のさわやかな表情とは違って苦
悩する女の表情を浮かべていました。