一丁目一番地の管理人(その30)
23 一丁目一番地の管理人(467)
鶴岡次郎
2012/09/14 (金) 16:12
No.2305

「失礼を承知で申し上げますが・・。
ゆり子さんは圧村さんと過ごした時間が忘れられないのでしょう・・、
もっと言えば、彼のカラダが忘れられないのでしょう・・、
彼と過ごした、夢のような一時が今も、ゆり子さんのカラダを燃やすのでしょう」

ゆり子がコックリと頷き、もう・・、涙ぐんでいるのです。

「この半年、女としてこれ以上は経験できないほど、たくさんの男と接し、
私は男の素晴らしさ、セックスの素晴らしさを堪能してきました・・。

そんなだらしがない経験を積んできた私ですが、
一言、ゆり子さんに申し上げたいことがあります・・・」

ゆり子がコックリと頷いています。

「本気で溺れた男の身体を、その感触を、女は何時までも覚えているものです。
こうしていても、男たちが与えてくれた喜びが、カラダの底から湧き上がってきます。
しかし、どんなに恋焦がれても、再び、手に入れることができない男のことは出来るだけ忘れる
ことだと、私は割り切ることにしています。

圧村さんのことは忘れるのです。
貴方の体に染みこんだ彼のカラダの思い出を早く消してください。
そのためには、別の男に溺れることです。

女の体に染みた男の思い出は、男の身体でしか消せません・・
圧村さんのことは忘れて、ご主人を大切にしてあげてください。
ゆり子さんがその気になれば、ご主人が圧村さんの記憶を消してくれるはずです」

不安そうな表情でゆり子が敦子を見ています。敦子がニッコリ微笑み、次の言葉を続けました。

「彼はその道のプロだから、きっと素晴らしいセックスだったと思います。
それに比べて、ご主人とのセックスはなんとなく物足りない・・。
とても、ご主人のモノでは圧村さんの穴埋めは出来ない・・。

これがゆり子さんの本音でしょう・・・?」

敦子を見て、ゆり子が何度も、何度も頷いています。

「これから先、ゆり子さんが先生になって、圧村さんのセックスをご主人に教え込むのです。
決して、ためらってはいけません、奔放に、誰憚ることなく、思い切って淫らになって、ご主人
と絡み合うのです。

多分、最初はご主人は途惑われると思いますが、直ぐにゆり子さんの新しい魅力に降参するはず
です。

実は、私もこのやり方で、主人を降伏させたのです。
今では、主人は新しいピアスを買ってきて、
綺麗に剃り上げたアソコに、主人が着けてくれるのです。

ああ・・、大変・・、スッカリ話し込んでしまった・・。

お互い、これから永い女の一生です・・、
頑張りましょう・・・・」

最後の言葉を背中で言って、敦子は勢い良く駆け出して行きました。その背中に、ゆり子が深々
と頭を下げていました。

後日談になりますが、それ以降、ゆり子が圧村の墓を訪れる回数は激減しました。そして、圧村
の墓標の前で行っていた自慰行為は完全に影を潜めました。

気候のよい夜半過ぎ、時々、ゆり子と中年過ぎの男が、人気(ひとけ)の絶えた土手の森の公園
で全裸で絡み合うのを見ることが出来ます。勿論、ゆり子と彼女の夫です。