一丁目一番地の管理人(その30)
22 一丁目一番地の管理人(466)
鶴岡次郎
2012/09/13 (木) 14:21
No.2304

案の定、敦子の説明だけでは良く判らないようで、ゆり子はぼんやりとした表情をしていました。
もっと直接的な説明がいいと判断した敦子は話題を変えました。

「ラビアピアスってご存知ですか・・・」

「・・・・・・・」

「ご存知のようですね・・・。
女が思っている以上に男達はラビアピアスを見て喜びます。
それで、私もそれを着けることにして、
少しづつ増やして行き、いまでは6個も身に付けています。

どう・・、これだけ言えば、
私がどんな生活してきたか容易に想像していただけますね・・」


さすがに今度は良く判った様子で、ゆり子は目の前に立っている敦子の全身を舐めるように見て
います。

「嫌だ・・、ゆりこさん・・・、
そんな目つきで私を見ないで・・、
私、インラン女に見えます・・?」

「いえ・・、そうじゃないの・・、
敦子さんに最初会った時から・・、何か違うな・・と思っていた。
綺麗な人ではあるけれど、それだけではない魅力があると思っていた。
それが、何だか、いま判ったの・・・」

「・・・・・・」

今度は敦子が口を閉じる番のようで、ゆり子の次の言葉をじっと待っています。

「感じたとおり言います。
失礼なことを言うかもしれません。
その時は許してください・・。

敦子さんの魅力は女が一人で作り出したものではないと思う。
おそらくたくさんの男達が敦子さんの女を磨いたのだと思う。
元々の素地がいいところへ、たくさんの男達が彼等の精をたっぷり注ぎ込んだ、
男達の精を吸って敦子さんの女は輝きを増し、捉えどころのない魅力を発揮している・・」

ゆり子の論評に敦子は反論しません。

「女の私にさえ判る敦子さんの魅力が、男達に判らないはずがない、
ご主人は、そんな敦子さんに無条件陥落したのよ・・」

眩しそうに敦子を見つめながら、ゆり子が呟いています。

「判りません・・・、主人の本当の気持は判りません。
散々にいけないことをして、数え切れないほどの男と交わってきた私を、
主人は黙って受け入れてくれたのです。
もし、逆の立場だったら、私は決して主人を許せないと思います・・」

敦子がしんみりと話しています。

「主人が本気で私を受け入れてくれたのか、
それとも、何処へ行くことも出来ないな私を哀れんでくれたのか・・、
最初、私は自問して、その答が掴めないまま、悩みました・・。

それで、私・・・、決心したのです・・・。
こんな私でも黙って受け入れてくれる主人の気持をあれこれ詮索しないで、
彼の大きな気持に、ただ甘えることにしようと思ったのです

私の素顔のままを、主人に曝して、彼に尽くすことにしたのです。
そう決心すると、随分と、気が楽になりました・・・」

敦子の言葉にゆり子が何度も頷き、そして、遠くを見る様子を見せ、うな垂れているのです。敦
子の言葉に刺激されて、ゆり子は彼女自身の問題を考えている様子です。